【HOPEFULなひと】ジミー・カーター元米大統領が目指した「美しいモザイク」

【HOPEFULなひと】2025年が幕をあけました。年初は「HOPIUSの想い」をもとに、人類に希望を見出し、持続可能で愛ある世界を目指して活動している人たちを、取り上げます。一人目は、昨年末に100歳でこの世を去った第39代米国大統領のジミー・カーター氏です。偉大な人格者であり、冷戦下の難しい時期に「人権外交」を掲げ、中東和平の道を切り拓いたカーター氏からのHOPEFULなメッセージです。

「中東和平」「気候変動対策」など新時代の道を切り拓いたカーター氏

ジミー・カーター元米大統領が2024年12月29日、米ジョージア州プレーンズの自宅で死去しました。享年100歳。

カーター氏は海軍での勤務を経て、実家のピーナッツ農家を継ぎ、ジョージア州議会議員、州知事を経て1977年に第39代大統領に就任しました。

在任中、彼は人権の擁護、国際紛争の平和的解決、気候変動への先駆的な取り組みなど、未来を切り開く政策を次々と打ち出しました。
南部出身でありながら、人種差別を否定し、就任演説で述べた言葉が彼の人権への信念を示しています。

率直に言って、人種差別の時代は終わった…貧しい人、田舎の人、弱い人、黒人は、教育、仕事、あるいは単純な正義の機会を奪われるというさらなる重荷を二度と背負うべきではない。

その後、アフリカ系アメリカ人や女性を積極的に公職に登用し、平等な人権のもとにある社会の実装に努めました。また環境問題への意識も高く、アメリカ大統領として初めて気候問題を重視。ホワイトハウスの暖房温度を下げ、自らジーンズやセーターを着用して節電に努める姿は、後のクールビズの先駆けとも言えるものです。さらにホワイトハウスの屋根には太陽光発電パネルを設置し、持続可能な未来への道筋を示しました。
アラスカ州の広大な自然を保護するための環境保護法も成立させ、包括的なエネルギー政策や教育省の創設を進めるなど、社会の基盤づくりに尽力しました。

外交面では、「人権外交」を掲げ、冷戦下の1978年にエジプトとイスラエルの歴史的な平和条約を仲介し、中東和平への道を切り開きました。


1979年には中国との国交正常化を実現するなど、平和的な国際関係の構築にも貢献しました。またパナマ運河条約やソ連とのSALT Ⅱ条約の締結など、任期中に数々の外交成果を残しました。

一方で、1979年2月のイラン革命に伴う第2次石油危機で、世界同時不況となるとアメリカ経済も低迷。同時期にイランの首都テヘランで起きたアメリカ大使館占拠事件への対応が弱腰だったなどの批判を受け、支持率が低下。再選を狙った二期目の大統領選で、共和党のレーガン氏に敗れました。

しかし、大統領退任後もカーター氏は歩みを止めることなく、人権と平和のための活動を続けました。その姿勢は多くの人々に希望と勇気を与え続けました。

2002年、ノーベル平和賞の受賞

大統領退任後、カーター氏は1982年に「カーター・センター」を設立し、世界中の紛争解決や開発途上国の人権向上に尽力しました。その情熱は途切れることなく、平和への希望を灯し続けました。

1994年には、核開発問題で緊張が高まる北朝鮮を訪問。当時の指導者キム・イルソン主席と直接会談し、核開発の凍結や査察受け入れを実現。その対話は後の「米朝枠組み合意」への道を切り開く礎となりました。
長年の努力は国際社会から高く評価され、2002年にノーベル平和賞の受賞に至りました。

私たちは、”るつぼ(溶け合い)”ではなく、美しいモザイクになるのです。異なる人々、異なる信念、異なる希望、異なる夢から成る美しいモザイクに。—2002年 ノーベル平和賞受賞スピーチよりー

その後も、精力的に活動を広げ、2005年には『カーター、パレスチナを語る—アパルトヘイトではなく平和を』を出版。パレスチナの自由と尊厳の重要性を訴え、平和への切実な願いを世に伝えました。その後もカーター氏はパレスチナとイスラエルの平和に向け、対話を続けました。

バイデン大統領は50年にわたり親交のあったカーター氏を「偉大な人格者であり、勇気・希望・楽観主義を体現した人物」と称賛。「この国のすべての若者たち、そしてよき人生を生きるということはどういうことかを模索しているすべての人たちに、カーター氏の原則・信念・謙虚さを学んでほしい」と語りました。

もちろん、私たちは違いのある国です。その違いは私たちを弱くするものではありません。違いこそが私たちの強さの源なのです。  1976年10月21日 ジミー・カーター

不安定な時代にあって、カーター氏の足跡は未来への指針であり、これからも私たちを励まし続けるでしょう。

(参考文献)BBC News、TheThe Carter Center
(画像)TOP画像:ANSA通信、ほか画像:TheThe Carter Center

大切な人に希望をシェア