HOPIX(ホピックス)|6月16日週の「希望の政治」トピック

AIで築く「共通繁栄」──G7サミットが示した人類の選択肢
HOPIUSの企画「HOPIX(ホピックス)」では、1週間の中で見つけた“希望の兆し”をカテゴリー別にお届けしています。今週は【政治】カテゴリーから、心に残るトピックをご紹介します。
2025年6月、カナダで開催されたG7サミットでは、各国首脳がAI(人工知能)と量子技術の発展について6件の共同声明を採択しました。今回の声明では、急速に進化するテクノロジーを「すべての人の繁栄のため」に活用することが明言され、倫理や安全性を重視しながら持続可能な技術社会を構築していくという新たな国際的枠組みの第一歩が示されました。
G7が示した「テクノロジー活用」
- 繁栄のためのAI活用ビジョン
- 公共セクターでのAI導入の推進
- 中小企業(SME)支援を重視
- 信頼性・安全性を軸とした責任あるAI開発
- 具体的な取り組み
- G7 GovAI Grand Challenge:公共サービス向けAI導入のラピッドソリューション・ラボ開催
- G7 AI Network (GAIN):加盟国間の協力体制を築くネットワーク設立
- AI Adoption Roadmap:中小企業への普及促進に向けた導入計画と事例共有
- 社会課題への対応
- デジタル格差の解消
- 高エネルギー消費・気候影響への国際的対策
- 財政支援(カナダ)
- AI普及推進:約1.74億カナダドル
- AI×エネルギー研究:1,000万ドル
- エネルギー分野AI分析支援:14.5万ドル
カナダのマーク・カーニー首相は「G7は、技術がもたらす可能性と課題を見据え、すべての人の利益につながる成果を追求していく」と述べました。

バチカンでもAI倫理が議論に
一方、同時期にバチカン市国で開催された第2回ローマAI会議(※)では、教皇レオ1世がIT企業の幹部に向けて、倫理的なAIフレームワークの導入を呼び掛けました。教皇は、バチカン当局者やシリコンバレーの幹部らが出席した集会へのメッセージで、次のように語りました。
(※)第2回ローマAI会議:人工知能(AI)の社会的・倫理的影響について議論する会合。Google、OpenAI、Anthropic、IBM、Meta、PalantirといったAIリーダーの代表者に加え、ハーバード大学とスタンフォード大学の研究者、そしてローマ教皇庁の代表者が出席した。
「AIは人間の物質的幸福だけでなく、知的、精神的幸福も考慮しなければなりません」
「AIを通じてこれほど大量の情報にこれほど迅速にアクセスできた世代はかつてありませんでした。しかし、データへのアクセスは、たとえそれがいかに膨大であっても、知性と混同してはならないのです」
出典:CNN Business
AIは民主主義を“補う力”になれるのか──オードリー・タン氏の思想
AIが政治や社会にどう貢献できるか。その一つの道筋を示すのが、オードリー・タン(唐鳳)氏の提唱する「プルラリティ(plurality)」と「デジタル民主主義」です。
プルラリティとは?
- 多様な意見が共存・対話できる社会を設計する思想
- 意見の対立を創造的対話の起点と捉え、AIが共通項を可視化
台湾での実践例
- 市民の意見をAIが集約し政策化するプラットフォーム「vTaiwan」
- 市民提案が5,000票以上で政府が回答義務を持つ制度「Join.gov.tw」
デジタル民主主義
- SNSやアンケートの意見を、AIがグループ分けをし合意点を浮かび上がらせる
- 極端な意見に偏らず、穏健な合意形成を支援
タン氏は次のように語っています。
「私たちはAIを“人工知能”ではなく、“支援知能”と見なしています」
「AIという言葉を見たとき、それが“権威主義の知能”なのか、“支援的知能”なのかを問いかけます」
AIは、市民社会の声を拾い上げるための“補助ツール”として、政治への信頼や民主主義の再設計に寄与しうるというメッセージです。
AIが支える“対話と共感”の社会へ
AIは、社会を分断する存在にもなりうる一方で、人と人との対話を支え、共感と合意を生むツールにもなりえます。
私たちは今、AIを「誰のために・何のために」使うかという視点から設計していくことが求められています。政治や教育、医療など、あらゆる場面で一人ひとりの声が活かされる社会をつくるために、AIは“補う力”としての可能性を秘めています。
なぜなら、AIはたった数秒で大量のデータを処理し、まとめ上げることができるからです。この強力なツールをどう活かすかは、私たち人間の意思にかかっています。
世界を平和で豊かな場所にしたいのか、自国や自分の利益ばかりを追い求めるのか。2025年というこの時代において、私たち一人ひとりの選択が、世界に与える影響はかつてなく大きくなっています。