美しさは「消費」から「循環」へ──サステナブルコスメアワード2025が示す新しい当たり前

(左から)循環型パーソナルケアブランドKruhiファウンダー井浦新氏、株式会社ルミネ代表取締役社長 表輝幸氏、審査員長 岸紅子氏(写真:サステナブルコスメアワードより)

日々のスキンケアは、自分をいたわる時間でもある。
その“選ぶ行為”が、自分の体だけでなく、地球の未来にもつながっているとしたら——。

2026年3月20日(金)、東京・ニュウマン高輪で「サステナブルコスメアワード2025」の表彰式が開催され、サンゴ礁保護に配慮した「TAEKO サンスクリーン」が殿堂入りを果たした。  

本アワードは2019年にスタートし、今回で7回目、「人にも地球にもやさしいコスメが当たり前になる世界」を目指す、2030年までの限定プロジェクトである。国内では初めて、化粧品およびファイントイレタリー分野(※1)においてSDGsの視点を取り入れた評価基準を策定。原料調達・製造・流通・消費・廃棄に至るまで、製品のライフサイクル全体を包括的に評価している。
サステナブルであることが特別な価値ではなく、「当たり前」となる社会の実現を目指している。

審査委長の岸紅子氏はこう語る。 「サステナブルは決して容易なことではありません。それは“選ぶ責任”であり、“未来を創る意志”です」

一人ひとりの選択が、市場を変え、文化を変え、次の時代の基準をつくっていく。コスメは「美しさ」へのアクセスであり、自分自身を慈しむための身近な存在だ。だからこそ、日常の中で何を選ぶかが、未来の環境や社会のあり方につながっていく。

(※1)ファイントイレタリー分野

シャンプーやボディソープ、歯磨き粉など、日常的に使われるパーソナルケア製品を指す。化粧品と同様に、肌や身体に直接触れる製品群であり、香りや使用感に加え、安全性や環境配慮も重視される分野。

“サステナブル”を形にしたプロダクトたち

サステナブルコスメアワード2025表彰式(写真:サステナブルコスメアワードより)

今回の受賞製品から見えてくるのは、「サステナブル」という言葉の具体性だ。

殿堂入りを果たした「TAEKO サンスクリーン」は、サンゴ礁への影響を考慮した設計に加え、フィジーでのサンゴ再生活動の支援にも取り組む。製品と環境保全の活動が一体となっている点が評価された。

GOLD賞を受賞したアムリターラの「ホワイトバーチモイストウォーター」は、北海道の白樺樹液をベースに、自然のリズムに寄り添ったものづくりが特徴だ。採取できるのは春先のわずかな期間のみ。さらに容器を繰り返し使う設計など、廃棄まで含めた循環が徹底されている。

SILVER賞を受賞したKruhiの製品は、コメヌカの機能性に着目した、機能性と循環が両立する製品設計。トドマツ、ユズ、チャなど本来は廃棄される素材を積極活用し、地域の農林業従事者ともつながる形で開発されている。こちらも廃棄まで含めた循環が徹底されている。「使うことでどんな未来が広がるか」を前提に設計されたプロダクトだ。
そして今年新設された「UPDATER賞」は、“顔の見えるコスメ”という観点から、透明性と関係性に光を当てた賞である。
こうした製品に共通しているのは、成分の良し悪しだけではない。 「どこから来て、どう作られ、どこへ還っていくのか」という視点だ。

またサステナブルな製品は、安価な大量生産や原料調達に依存しないため、構造的にコストが上がりやすい側面がある。一方で各ブランドは、過剰な包装や広告を抑えたり、リフィル設計や高濃度化によって長く使える設計にするなど、「納得して選ばれる価格」を成立させる工夫を重ねている。

井浦氏の手がけるKruhi、循環を前提にしたものづくり

俳優であり循環型コスメブランド「Kruhi」(クルヒ)を手がける井浦新(いうら・あらた)氏はこう語る。

サステナブルコスメアワード2025表彰式でSILVER賞を受賞をする井浦夫妻

「どれだけ気をつけて選んでも、本当に納得できるものに出会えなかった

オーガニックと表示されていても、実際にはその成分の他に石油由来の成分が使われていることもある(※2)。そうした現実に触れ、強い違和感を抱いていたという。

(※2)「オーガニック」と表示されていても、すべての成分が自然由来とは限らない。使用感や保存性、コストのバランスから、一部に石油由来成分が使われる場合もあり、表示ルールも国によって統一されていない。

転機となったのは、コロナ禍で家族と過ごした時間だった。子どもが生まれ、「何を食べ、何を使うか」を見つめ直す中で、最終的にたどり着いたのが「自分たちでつくる」という選択だった。家族の対話から生まれたものづくりは、未利用資源の活用や地域との関係性まで含めて設計されている。

その背景にあるのは、「自然に触れ、五感が満たされる感覚を日常に取り戻したい」という思いだ。近年の異常気象を前に、大切なものが失われていく未来を変えたいという意識も、ブランドの根底にある。

100%天然由来というのは、もはや当たり前だと思っています。その上で、生産から使用、廃棄に至るまで、すべてのプロセスに関わる人たちが幸せでいられる循環をつくること。それを諦めずに届け続けることは簡単ではありません。
でも、そのプロダクトが届いた人の体が変わると、心も変わっていく。活力や自信が生まれる。それは俳優の仕事とはまた違うやりがいです。表現は心に作用するものですが、プロダクトは身体や生活そのものに影響を与えるものだからです

製品を通じて、人の身体や感覚に直接働きかけること。その手応えは、俳優としての表現とは異なる実感を伴うものだった。

SILVER賞を受賞したKruhiのTHE FACE CLEANSE(クレンジング)とTHE LAYER SERUM(美容液)

一方で、井浦氏はこうも語る。

楽しくなければ続かない。無理をしている姿に、人は共感しない。だからこそ、“楽しそう”“面白そう”と思ってもらえる形で広げていくことが大切だと思っています
サステナブルコスメは、まだ社会全体で見れば主流ではない。この分野にいると共感し合える一方で、一歩外に出れば“何それ”と言われることも少なくない。
だからこそ、それぞれのブランドが、自分たちなりのやり方で価値を伝えていく必要があると思っています」

ヤラブの木が掲げる「奪わず、壊さず、分かち合える未来」

(左から)UPDATER代表 大石英司、ヤラブの木代表 三輪智子氏、審査員長 岸紅子氏(写真:サステナブルコスメアワードより)

もう一人、今回の受賞の中で印象的だったのが、沖縄・宮古島の小さな島から生まれたプロダクトだ。

UPDATER賞を受賞した、ヤラブの木 ナウレ「タマヌUVケアクリーム」。その出発点は、美しい海を守りたいという切実な思いにある。
「この製品は、創業当初から、島のサンゴの海を守るために作りたかった商品」代表の三輪智子さんはそう語る。

宮古島の海でも、サンゴ礁の死滅など環境の変化は進んでいる。一般的な日焼け止めに使われる一部の紫外線吸収剤は、サンゴや海洋生態系への影響が指摘されており、この製品ではそうした成分を使用せず、“リーフセーフ”の考え方をベースに設計されている。
原料には、強い紫外線の中で育つタマヌやクロヨナのオイルを使用。さらに、池間島で無農薬・無肥料で育てた植物を取り入れ、自然由来100%を実現した。

そしてこの取り組みのユニークさは、配合する「成分」を超え、「奪わず、壊さず、分かち合える未来」というビジョンを掲げている点にある。

ヤラブの木公式HPより:https://yarabutree.com/social-good/

島では古くから、海で獲れたものや初物を分かち合う文化が受け継がれてきた。タマヌの種を集める人々は、種とともに魚や野菜を添えて運んでくるという。そうして集まった資源から生まれるのは、単なる商品ではなく、関係性そのものだ。
島の人たちとともに育ててきたヤラブの森は、やがて誰もが関われる「コモンズ(共有地)」へと育っていく。そこでは、外から資源を奪うのではなく、地域の中で恵みを循環させ、分かち合う。

池間島の言葉で「ユー(富・豊穣)」と呼ばれる豊かさは、そうした循環の中で生まれるものだ。

受賞したヤラブの木 ナウレ「タマヌUVケアクリーム

この受賞は、オイルづくりに関わってくれている島の人たちにとっても、大きな励みになります
人口数百人の小さな島で続けられている営みは、決してローカルな話ではない。 むしろ、これからのものづくりの可能性を示している。

選ぶことは、責任であり、未来への意志

都市と島、異なる場所から生まれた取り組みは、同じ未来を指している。
サステナブルコスメアワードは2030年に終了する。それは終わりではなく、「当たり前になる」という到達点を意味している。

本アワードから見えてきたのは、誰もが日々行っている「消費」という行為の可能性だ。
それは単なる消費ではなく、人々の経済や文化、想いをつなぎ、循環させていく力を持っている。

選ぶことは、責任であり、未来への意志でもある。
その先に、これからのサステナブルな社会が広がっていく。

サステナブルコスメアワード
https://sustainableaward.jp/
国内で初めて、化粧品およびファイントイレタリー分野においてSDGs視点の評価基準を策定し、「人にも地球にもやさしいコスメ」を表彰するアワード。環境省「つなげよう支えよう森里川海プロジェクト」のアンバサダー有志が発起人となり、環境・メディア・化粧品など多分野の専門家を審査員として招くとともに、環境活動に取り組む学生を事務局スタッフ兼審査員に起用。多角性・中立性・公平性を担保したアワードとして、2019年にスタートした。SDGs視点をベースとした評価基準のもと、成分だけでなく、原料生産・製造・販売・流通・消費・廃棄まで、製品のライフサイクル全体を通じて評価・審査・表彰することで、コスメのサステナビリティ推進を目指している。

送信中です

×

※コメントは最大500文字、3回まで送信できます

送信中です送信しました!
大切な人に希望をシェア

Translation feature does not work on iOS Safari.