社会性と経済性を両立する──Zebras and Company 玉岡さんが挑む、「相利共生」の社会づくり

気候変動、貧困、紛争、人権侵害、パンデミック。
世界は今、複雑で解きにくい社会課題を同時に抱える時代に入っています。一方で、その課題に挑む人材は、圧倒的に不足しています。
前回に続き、Professionals for Impact(PFI)とホピアスの共創企画として、「社会課題起点のキャリア」を歩むプロフェッショナルたちの意思決定をひも解いていきます。本シリーズでは、実際に社会課題領域でキャリアを築く人たちの思考プロセスや転機をたどりながら、社会課題を仕事にするという選択肢を、より現実的で再現性のあるキャリアとして描いていきます。
今回お話を伺ったのは、Zebras and Company(以下、ゼブラアンドカンパニー)で社会性と経済性の両立を目指す“ゼブラ企業”への経営支援や資金調達支援を手がける玉岡佑理さん。
戦略コンサルティングファームのベインアンドカンパニー、教育スタートアップのatama plus(以下、アタマプラス)を経て、現在はゼブラ企業の成長を支援しながら、社会の仕組みそのものを変える挑戦を続けています。
「どんな会社で働きたいか」ではなく、「どんな社会をつくりたいか」。
その問いは、玉岡さんのキャリアをどのように育ててきたのでしょうか。これまでの歩みを伺いました。
玉岡 佑理(たまおか・ゆり)さんプロフィール
2017年京都大学卒業後、ベイン・アンド・カンパニーでポートフォリオ戦略の策定や組織改革、収益改善など、幅広い業界・テーマの戦略策定に従事。プロボノ活動として児童福祉関連のNPOへのコンサルティング支援や、Social Impactチームの一員としてプロボノ運営等を経験。その後、atama plus株式会社でtoB/toC向けの教育サービスの新規事業開発や事業企画等を経験し、2024年5月よりZebras and Companyに入社。教育や児童福祉、伝統文化、アートに関心あり。

▼ 過去の記事は以下よりご覧ください
第1回 株式会社Professionals For Impact 代表取締役CEO 平井 光城さん

第2回 公益財団法人 国際文化会館 長川 美里さん

「社会の仕組み」を変える会社──ゼブラアンドカンパニー

2023年、日本政府が毎年策定する「骨太の方針」に、一つの聞き慣れない言葉が盛り込まれました。
「ゼブラ企業」。
急成長やIPOを目指す「ユニコーン企業」が、一頭の伝説上の動物を由来とするのに対し、「ゼブラ(シマウマ)」は群れで生きる実在の動物です。その名の通り、ゼブラ企業は社会性と経済性の両方を追求し、相利共生(集団・群れとしての共存)を大切にする企業の総称です。
地域や顧客、従業員、投資家など、多様なステークホルダーと共に価値を生み出す、新しい企業のあり方として注目を集めています。そのゼブラ企業という概念を日本に広げ、ムーブメントを牽引してきたのが、ゼブラアンドカンパニー。同社が支援する企業は実に多彩です。
福島県国見町では、規格外の桃の流通や、これまで廃棄されていた柿の皮を活用したデリケートゾーンケアブランドを展開する株式会社陽と人(ひとびと)。
長野県御代田町や秋田県男鹿市、野沢温泉村などで、地域の資源や人を生かしながら、持続可能な地域経済づくりに取り組む株式会社NEWLOCAL。
ミャンマーで「排除される人のない経済の仕組みづくり」を掲げ、郵便も届かない農村部に物流基盤を構築するリンクルージョン株式会社。
一見すると、それぞれ異なる分野で活動しているように見えます。しかし、彼らが目指しているものは共通しています。
事業を通じて、社会の仕組みそのものを変えること。
ゼブラアンドカンパニーもまた、一社一社の経営支援だけを目的としているわけではありません。投資、経営支援、理論化、行政や地域金融機関との協業、そしてムーブメントづくり。それらを組み合わせながら、ゼブラ企業が生まれ、育ち、増えていく社会の仕組みそのものをつくろうとしています。
言い換えれば、企業を支援しているのではなく、企業が社会を変えられる環境をつくっている会社です。
その最前線で、ゼブラ企業の経営者と日々向き合い、事業やファイナンスを軸に企業の未来づくりに挑戦しているのが、玉岡佑理さんです
「お金には色がある」──会社の未来を設計する仕事

──現在は、どのようなお仕事をされているのでしょうか。
玉岡さん ゼブラアンドカンパニーでは、大きく5つの事業を行っています。ゼブラ企業への投資、経営支援、ゼブラ経営の理論化、多様なパートナーとの協業、そしてムーブメントづくりです。
私は主に、経営支援とファイナンスの領域を担当しています。
経営支援の一つとして、例えば大企業と地域企業が共創するプログラム「FUTURE LENS(※1)」は入社時から設計・伴走をしています。
大企業の多様な専門性を持つ社員が、地域ですでに社会課題に取り組む社会起業家に伴走し、それぞれのスキルやノウハウを持ち寄りながら事業価値の体系化や社会課題の可視化に取り組んでいます。
そうした共創を通じて、地域の実践から生まれた「未来への視点(FUTURE LENS)」を、広く社会に届けていくプログラムです。
ファイナンス領域は、創業間もない成長期のゼブラ企業の資金調達支援です。その中でも、私たちが大切にしているのが「Finance for Purpose」という考え方です。
(※1) FUTURE LENS(フューチャーレンズ)
株式会社日建設計が行っている、地域で社会課題に挑む社会起業家の事業価値を体系化・可視化し、その取り組みを社会へ広げるための共創型社会環境デザインプログラム。実証研究費の提供に加え、日建設計の都市・建築・制度といった専門性を持つ共創社員が伴走し、事業の価値の可視化や課題の構造化、地域への展開戦略の設計を支援。多様な専門性をつなぎながら、地域発の挑戦を持続可能な仕組みへと育てていきます。

FUTURE LENSの第1期初年度報告会を、PYNT竹橋にて開催(提供:ゼブラアンドカンパニー)
──「Finance for Purpose」とは、どのようなものなのでしょうか。
玉岡さん 一言で言うと、「社会的インパクトを起点に、その会社の目的や戦略、そして未来に合った資金との関係性を設計すること」です。一般的な資金調達は、「いくら集めるか」「誰から調達するか」が中心になりがちです。
でも私たちは、その前に「この会社は何のために存在しているのか」「誰のために事業を行っているのか」「どんな社会を実現したいのか」を経営者と一緒に考えます。
その未来を実現するために、今の事業戦略は適切なのか。何が足りなくて、誰を巻き込む必要があるのか。そこまで整理した上で、初めて「この会社にはどんな資金が合っているのか」を考えます。
ベンチャーキャピタルが適している会社もあれば、地域金融機関や財団、補助金、場合によってはクラウドファンディングが最適なケースもあります。大切なのは、お金を集めることではなく、会社が実現したい未来に合った資本を選ぶことです。
──「お金(資本)を選ぶ」とは、どういうことでしょうか。
玉岡さん ゼブラアンドカンパニーには、「お金には色がある」という考え方があります。
同じ1億円でも、ベンチャーキャピタルから調達するのか、地域金融機関から借りるのか、財団やエンジェル投資家から支援を受けるのかによって、そのお金が持つ意味や、その後の会社の成長の仕方は大きく変わります。
だから私たちは、資本政策と事業戦略を切り離して考えません。会社が目指す未来から逆算して、その実現に最もふさわしい資金の集め方や、資金提供者との関係性まで設計していきます。これを私たちは「Finance for Purpose(ファイナンス フォー パーパス)」と呼んでいます。
──実際には、どのように伴走されているのでしょうか。

玉岡さん ある企業では、最初は資金調達のご相談から始まりました。でも対話を重ねる中で、会社が目指すビジョンと現在の事業、これから取り組むことを整理し、活動と成果のつながりを見える化した、「ロジックモデル」を一緒に描いていきました。
すると、「会社の目指す方向性は何か」「どのような道筋で実現をするのか」「いま足りないものは何か」が見えてきたんです。
最初は資金調達の相談でしたが、結果として会社の未来そのものを描き直すプロジェクトになったんです。ここが、私がゼブラアンドカンパニーで一番面白いと感じているところです。
コンサルティングでは、「このテーマを支援する」とプロジェクトの範囲が決まっていることが多いと思います。一方、私たちは最初から資金調達ありきでは考えません。
経営者が本当に実現したいことは何か。
その会社に今、本当に必要なのは資金調達なのか、それとも事業戦略や組織づくりなのか。
会社全体を俯瞰しながら、一緒に考えていきます。
資金調達はあくまで手段です。私たちがコミットしているのは、その会社がより良くなり、挑戦が広がること。その先に、社会の仕組みそのものが少しずつ変わっていくことだと思っています。
「正解を探す」から「未来を描く」へ──Different Scale, Different Futureが変えた視座

──ゼブラアンドカンパニーに入社してから成長したなと感じることはありますか?
玉岡さん 私自身、まだまだ日々勉強中ですが、経営の知識や、経営者の目線で物事を考える力など、成長したと感じることはいくつもあります。でも、一番大きかったのは、ゼブラアンドカンパニーが掲げる「Different Scale, Different Future(ディファレントスケール ディファレントフューチャー)」という考え方に出会えたことです。
ここでいう「スケール」は、会社の規模や売上ではありません。何を価値として測るのか、その”ものさし”です。ものさしが変われば、未来も変わる。そんな考え方です。
例えば、「社会性と経済性は両立しない場面もあるのでは」と言われることがあります。
でも私たちは、その前提自体を問い直します。
もし両立できないのであれば、それは企業ではなく、今の社会の仕組みに課題があるのかもしれない。だったら、その仕組みを変えればいい。
目の前の課題を解決するのではなく、「本来どうあるべきなのか」「どんな社会をつくりたいのか」という未来から逆算して考える。この視点を身につけられたことが、私にとって一番大きな成長でした。
また、ゼブラアンドカンパニーでは一方的に答えを示すのではなく、経営者やステークホルダーと対話を重ねながら、一緒に未来を描いていきます。その中で経営や組織づくりなど新しい領域にも挑戦しながら、「自分は何を実現したいのか」という問いも、日々磨かれ続けています。
「分析する人になるな」──ベインアンドカンパニーで身につけた”問いを立てる力”
──ゼブラアンドカンパニーで新たな視座を得られた一方で、その土台はこれまでのキャリアで培われてきたものでもあると思います。今につながる力は、どこで身についたのでしょうか。

玉岡さん 今につながる力は、一つの会社で身についたというより、それぞれのキャリアの中で少しずつ積み重なってきたものだと思っています。その最初の土台が作られたのが、新卒で入社したコンサルティングファームのベインアンドカンパニーでした。
約4年間、消費財メーカーの収益改善や企業統合、製造業の中期経営計画の策定など、さまざまなプロジェクトに携わりました。論理的に物事を整理する力や仮説思考の基礎は、この時期に徹底的に鍛えていただきました。
コンサルタントというと、分析をして資料を作る仕事だと思われがちですが、ベインでは若手の頃から
「分析家になるな」
と言われます。
本当に価値があるのは分析そのものではなく、「顧客が本当に答えを出すべき問いは何なのか」、そして「顧客に対して何が言えるのか」で、そこを徹底的に考え抜くことだと教わりました。
論点さえ間違えなければ、仕事の7〜8割は終わっている。逆に、問いを間違えれば、どれだけ分析しても意味がありません。今振り返ると、「本質を捉え、問いを立てる力」の基礎は、この頃に育てていただいたものだと思います。
──他に今に繋がる学びはありましたか?
玉岡さん そうですね。もう一つ大きかったのは、いわゆるプロフェッショナルとしての姿勢です。クライアントから高いフィーをいただく以上、それ以上の価値を返す。小さなことでも最後までやり切る。そういう姿勢は、本当に厳しく教えていただきました。もちろん、フィードバックもたくさんいただきました。でも、それは資料をきれいにつくるためではなく、
「本当にクライアントの課題を解決できる提案になっているのか。」
そこを最後まで考え抜く姿勢を、日々の仕事の中で教わりました。
今、ゼブラ企業の経営者と伴走するときも、この二つ――問いを立てる力と、最後まで伴走する姿勢――は、仕事の土台になっています。
──ベイン時代には社会課題に取り組むNPOの支援にも関わられていたそうですね。
玉岡さん はい。通常のプロジェクトとは別に、社内のソーシャルインパクトチームでプロボノ活動にも参加していました。
児童福祉関連のNPO法人では、地域の中で支援が必要な子どもたちを見つけ、適切な支援につなげるの仕組みづくりに携わりました。
地域の中には、子どもたちを支える多様な人がいます。学校の先生や駄菓子屋さん、自治体や地域企業が重要な役割を果たすこともあります。
私自身も実際に地域へ足を運び、校長先生や地域の方々、お店の方などに一人ひとりヒアリングを重ねました。どんな子どもが支援からこぼれ落ちているのか、どうすれば地域全体で見つけ、支えられるのか。その地域ならではの仕組みを、一緒に考えていくプロジェクトでした。
この経験を通して、「一人を支援すること」と同時に「支援が届く仕組みをつくること」も大切なのだと実感しました。
また同時に、「子どもたちが自分らしい人生を歩めるように、教育や福祉の領域に携わりたい」という思いも強くなっていきました。その思いから、次に選んだのが教育スタートアップのatama plusでした。
「事業をつくる面白さ」と「資本の力」──atama plusで得た実践知

──その後、教育スタートアップのatama plusへ転職されています。
玉岡さん コンサルタントとして企業を支援する中で、徐々に「事業を動かす側に関わりたい」と思うようになりました。
また、自分自身が教育によって人生の選択肢が広がった原体験があり、「教育は人の可能性を広げるドライバーになり得る」と感じていました。そうした思いが重なり、AIを活用した教育スタートアップのatama plusに入社を決めました。
最初は学習塾や予備校への導入支援を担当し、単にシステムを導入するのではなく、実際に教室へ足を運び、生徒や先生の声を聞きながら、より良い学びの体験を届けるための改善を重ねていました。その後は新規事業にも携わり、社内外の様々な人と連携をしながら、新しくサービスをつくるという経験もさせていただきました。
現場で生徒や先生と向き合う中で、自分たちがつくったサービスが実際に学びの体験を変え、人生の選択肢を広げるきっかけになり得ることを実感しました。
「教育は人の可能性を広げる」
学生時代から感じていたその思いが、事業を通じて現実になっていく。その面白さを得られたことが、atama plusでの大きな学びだったと思います。
──事業を作っていく中で手応えを感じたことはありましたか?
玉岡さん 一番印象に残っているのは、ある生徒のことです。
勉強が苦手で、勉強ができる兄と比べられることも多く、「自分はどうせ勉強ができないから」と、勉強に対してずっと後ろ向きになっていた生徒がいました。
でも、プロダクトを使って人一倍努力を努力をした結果、ある教科の成績が短期間でぐんと伸びたんです。それをきっかけに、必要な学習は何かを自分で考えて計画を立てるなど、進んで勉強に向き合うようになっていきました。
成績が上がったこと以上に何より嬉しかったのは、自分の関わったプロダクトやサービスを通じて、「自分にもできるんだ」という自己効力感をその子自身が掴んだことでした。
ひとつの成功体験で自分に自信を持てるようになった姿を見たとき、「ふとしたきっかけで人の人生は本当に変わるんだ」と実感しました。
── 資金調達によって会社が成長する姿も経験されたそうですね。
玉岡さん はい。atama plusは大きな資金調達を行い、優秀な仲間が増え、会社のカルチャーも育ち、事業にも積極的に投資できるようになりました。資本には、会社を大きく成長させる力があることを肌で感じました。
一方で、多様な投資家とともに事業を進める中で、会社の意思決定にも変化が生まれていくことを目の当たりにしました。
それが良い・悪いということではなく、その経験を通して、「誰から、どんなお金を受け取るか」が重要だということを実感しました。資本は、会社を成長させるだけではありません。経営の意思決定や、会社が目指す未来そのものにも影響を与えます。
だからこそ、「どんなお金を選ぶか」は、「どんな未来を選ぶか」と同じことなんだと考えるようになりました。
「教育が人生を変えた」──社会課題へ向かった原点

──ここまでお話を伺っていると、教育や社会課題への思いが一貫しているように感じます。その原点はどこにあるのでしょうか。
玉岡さん 振り返ると、一番大きかったのは自分自身の経験だと思います。
私は、両親があまり教育に詳しくないこともあり、学校の補習のような感覚で、たまたま近所の個人塾に通い始めたのですが、そこが本格的な受験指導をする塾だったんです。負けず嫌いな性格もあって勉強にのめり込み、中学受験に挑戦しました。
第一志望だった国立の中高一貫校へ進学すると、それまでとはまったく違う世界が広がっていました。自由な校風で、本当にユニークな子たちばかりでした。フィンランドが好きすぎて毎日のように国旗を身につけている子や、コップにうなぎの絵を描いてペットとして育てている子もいました。家庭環境も、価値観も、将来の夢も、本当にさまざまでした。
もっと多様で良いんだと、それまでの自分の当たり前が大きく広がった瞬間でした。 その経験が、自分の人生の選択肢を大きく広げてくれたと思っています。だからこそ、「教育には人生を変える力がある」という実感は、ずっと自分の中にありました。
もちろん、その頃から教育の仕事を目指していたわけではありません。ベイン時代に社会課題に向き合う人たちと出会い、自分の時間を何に使いたいのかを考えるようになり、その後のキャリアへとつながっていきました。
振り返ると、形は変わっても、「誰かの可能性や選択肢を広げること」に惹かれ続けてきたのだと思います。
裁量の大きな環境が、キャリアを育てる

──ゼブラアンドカンパニーで働く魅力や、ご自身が成長を実感するのはどのようなところでしょうか。
玉岡さん 一番は、裁量の大きさですね。
まだフルタイムでの勤務者が6人ほどの小さな組織なので、自分で手を挙げれば、新しいテーマにも挑戦できます。例えば教育やファイナンス、地域、伝統文化など、自分の関心があるテーマについて「これをやりたい」と提案すると、それを尊重してくれる文化があります。
仕事を与えられるというより、自分で仕事をつくっていく感覚に近いですね。
また、一緒に仕事をする人たちから受ける刺激も大きいです。社会課題に挑む起業家、大企業で新規事業に取り組む方、行政や金融機関など、本当に多様な立場の方々と毎日のように議論します。
皆さん、それぞれが実現したい未来を持っていて、その思いや視点に触れるたびに、大きな刺激を受けます。その中で、自分自身も「本当に実現したいことは何か」「何に時間を使いたいのか」を、自然と考えさせられるんです。
──キャリア形成という点でも、特徴的な制度があるそうですね。
玉岡さん はい。ゼブラアンドカンパニーでは、会社からキャリアパスが与えられるわけではありません。自分自身で、「1年後」「3〜5年後」「その先」の目標を考え、それをもとに毎年の目標を設定していきます。
私なら教育や福祉、伝統文化、ファイナンスなど、自分が取り組みたいテーマを軸に、「今年はどんな案件に挑戦し、その中でどんな役割を担えるようになるか」まで自分で設計します。
もちろん、一人で決めるわけではありません。代表とも対話しながら、「もっとチャレンジしてもいいんじゃない?」「本当にやりたいことは何?」とフィードバックをもらい、一緒にブラッシュアップしていきます。
── 一般的な評価制度とは少し違いますね。
玉岡さん そうですね。面白いのは、そのロードマップ自体が、「ゼブラアンドカンパニーで出世するため」のものではないことです。最終的には、自分自身が社会で新しい事業をつくったり、経営者として活躍したりできる状態を目指しています。
つまり、会社の中だけで完結するキャリアではなく、「社会で価値を発揮できる人になること」を前提に育成が設計されているんです。だから評価も、人それぞれ違います。
チャレンジするテーマも、目指す成長も、一人ひとり違う。その違いを尊重した上で、一緒にキャリアを育てていく文化があります。
私は、この組織はとてもフェアだと感じています。評価も、挑戦の機会も、「その人が何を目指しているか」を基準に考えてくれる。だから安心して挑戦できますし、自分自身も成長し続けたいと思えるんです。
仕事を通じて知識や経験を積むだけではなく、自分がどんな社会をつくりたいのかも少しずつ明確になってきました。
だから、この仕事は会社の成長だけではなく、自分自身のキャリアも育ててくれる仕事だと感じています。
キャリアは、社会を変えたいという想いから育っていく

──今後、ご自身はどのようなキャリアを歩んでいきたいと考えていますか。
玉岡さん 今も教育にはすごく関心があります。
一方で、ゼブラアンドカンパニーでさまざまな起業家や地域、企業の方々とご一緒する中で、自分自身の関心も少しずつ広がってきました。
最近は、フィランソロピー(人々の幸福や社会課題の解決を目的とした利他的な活動)にも興味があります。これまで、様々な活動を見ていくなかで、事業として成り立ちにくい、資金の流れにくい領域があることを目の当たりにしてきました。そうした活動を支える資金や仕組みが、社会にどう循環していくのか。まだ自分の中でも整理しきれているわけではありませんが、とても可能性を感じています。
教育も、ファイナンスも、地域も、一見すると違うテーマに見えますが、自分の中では一本につながっています。社会には、本来もっとさまざまな価値や意思があるはずです。でも今は、その多くが経済的なものさしだけで評価されてしまっています。
だからこそ、違う価値を認める仕組みや、新しいお金の流れをつくっていきたいと思っています。
例えば、子どもを「家庭だけの責任」ではなく、「社会全体の財産」と考えられるようになれば、生まれた環境によって人生の選択肢が左右されることは、もっと減らせるかもしれません。
誰もが、自分らしい未来を選べる社会。そのための仕組みづくりに、これからも関わっていきたいと思っています。
──ゼブラアンドカンパニーとしては、これからどのような挑戦をしていくのでしょうか。

玉岡さん ゼブラ企業という言葉が日本に入ってきて約7年になります。
この数年で、政府の「骨太の方針」に盛り込まれたり、行政や金融機関も動き始めたりと、想像以上に広がってきました。一方で、社内ではもよく、「トレンドではなく、社会の仕組みとして実装していこう」という話をしています。
これまで積み重ねてきた知見やネットワーク、実践から得たインサイトを、誰もが使える仕組みにしていかなければ、本当の意味で社会は変わりません。
その挑戦の一つが、新しいファイナンスの仕組みづくりです。
今でもスタートアップの資金調達というと、「ベンチャーキャピタルから調達するか、銀行から借りるか」という選択肢が中心です。でも、本来はもっと多様なお金の流れがあっていい。
ゼブラ企業のように、社会性と経済性の両立を目指す企業に合った資本のあり方や、それを支える投資家や金融の仕組みを増やしていきたいと考えています。
──最後に、社会課題起点のキャリアに興味を持つ方へメッセージをお願いします。

玉岡さん 私自身も、最初から今のキャリアを描いていたわけではありません。
振り返ると、自分の原点にはずっと、「社会がより良くなる仕組みをつくりたい」という思いがありました。
でも、それは最初から言葉にできていたわけではなく、教育や事業づくり、ファイナンスなど、さまざまな経験を重ねる中で少しずつ輪郭が見えてきたものです。
だから、「何が正しいキャリアなんだろう」と考えすぎなくてもいいと思っています。
それよりも、「自分はどんな社会だったらいいと思えるのか」を考えてみることの方が大切なんじゃないでしょうか。
私の場合は、生まれた環境によって人生の選択肢が左右されてしまうことに、ずっと違和感がありました。本人の努力だけでは越えられない壁がある。その壁を少しでも低くしたいという思いが、自分のキャリアの軸になっています。
「こういう会社で働きたい」「こういうポジションにつきたい」というよりも、「こういう社会をつくりたい」「自分の望む人生を歩める人を増やしたい」という想いが、これまでのキャリアを引っ張ってきました。
だから、自分が夢中になれることや、少しでも違和感を感じていることを大切にしてほしいです。
そこを掘り下げていくと、自分が本当に目指したい社会や、自分らしいキャリアの輪郭が少しずつ見えてくると思います。
「どんな会社で働くか」より、「どんな社会をつくりたいか」
今回の取材で印象的だったのは、玉岡さんが終始、「どんな社会をつくりたいか」を起点にキャリアを語っていたことです。
ベインアンドカンパニーで問いを立てる力を磨き、atama plusで事業をつくり、ゼブラアンドカンパニーでは社会の仕組みそのものに向き合う。その一つひとつの経験はバラバラではなく、「社会をより良くする仕組みをつくりたい」という一本の軸でつながっていました。
複雑な社会課題は、一人の善意だけでは解決できません。
だからこそ、経営、ファイナンス、事業づくりといったプロフェッショナルな力を持つ人たちが、「こんな社会をつくりたい」という意思を持ち、その力を社会課題の解決へ向けたとき、これまで当たり前だった不平等や不公平を少しずえていけるのだと、玉岡さんをみて確信しました。
歴史学者・思想家のルトガー・ブレグマンは著書『モラル・アンビション(倫理的野心)』の中で、「あなたの才能を無駄にするな」と語ります。
社会課題起点のキャリアとは、自分の専門性や経験、そして情熱を、より良い社会をつくるために生かすという選択肢です。
「自分は、どんな社会をつくりたいのだろう。」
その問いからキャリアを考え始めたとき、仕事の選び方だけではなく、生き方そのものが変わっていくのかもしれません。
キャリアをつくる玉岡さんのインプット
愛読書:
- 『21世紀の教育』
自分を知ることが、多様な他者や社会への理解につながるという考え方が、自分の中でひとつにつながった本 - 『GRIT』
才能よりも、長期的に情熱を持って取り組み続けることが成果につながるという考え方にとても共感 - 『考える技術・書く技術』
新卒の頃に読み、論理的に考え、相手に伝わる形で構造化する力の土台になった本 - 『もしも人生をやりなおせるなら If I had my life to live over』
迷いが生じたときに読み返し、自分の心に従うことの大切さを思い出させてくれる詩
日頃の情報源:
- 日本経済新聞
- WORKSIGHT
- Greenz.jp
- Stanford Social Innovation Review
「インパクトキャリア」を、共に描くために
私たちホピアスは、社会課題を起点にしたキャリアを、より現実的な選択肢として社会に広げていきたいというPFIの想いに共感し、本企画を共創しています。
今後も、PFIを通じて転職・就職した方々や、インパクトキャリアの最前線で活動する方々へのインタビューを連載形式でお届けしていきます。
「社会課題」と「仕事」をどうつなげていくのか。
そのリアルな意思決定や実践を通して、「インパクトキャリア」という選択肢を、みなさんと共に考えていけたらと思っています。ぜひ率直なご意見やご感想をお聞かせください。
株式会社Professionals For Impact(プロフェッショナルフォーインパクト)
LinkedIn:https://www.linkedin.com/company/professionals-for-impact
Facebook:https://www.facebook.com/professionalsforimpact
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