【映画紹介】まだ見ぬ未来を恐れるより、目の前の光を信じたい──『ウィー・ハブ・ア・ドリーム』(8/7公開)

【Touch Hope】
本、映画、展示、イベント、場所——。
世界には、人の可能性や社会の前向きな変化に気づかせてくれる作品や体験があります。
「Touch Hope」は、ホピアス編集部が出会った“希望に触れられる”モノやコトをご紹介するシリーズです。
一冊の本、一つの映画、一つの場所との出会いを通じて、世界を少し違った視点で見つめ、新たな思考や行動につながるきっかけをお届けします。
「この子は将来、どのような大人になるのだろう」
「私がいなくなった後も、幸せに生きていけるだろうか」
子育てをしていると、ふと考えることはありませんか?
私は息子について考えるとき、先の見えない不安に包まれることがあります。彼は自閉スペクトラム症(ASD)で、現在は不登校です。
まだ現実となっていない未来を恐れ、希望を見出せず、必要以上に悲しくなってしまう。
そんな折に出会ったのが、映画『ウィー・ハブ・ア・ドリーム』でした。
パスカル・プリッソン監督によるこのドキュメンタリーは、ハンディキャップがあっても未来をあきらめない子どもたちの姿を追った作品です。
この作品が私に届けてくれたいくつかの言葉とともに、「私たちにとっての希望とは何か」「子どもとどう向き合っていけばいいのか」を、考えてみました。
世界のどこかで「今」を生きる子どもたち
作品に映し出されるのは、5カ国6人の子どもたちです。
※本文中の人物名は、敬称を省略して表記しています。
フランスに住む少女モードは、生まれたときに片足を切断し、重度の聴覚障がいもあります。それでもバレエや音楽に夢中で、障がいを感じさせない、しなやかな姿が印象的です。

ルワンダに暮らすアルビノ(*)の少年サビエルは、差別や偏見だけでなく、「アルビノ狩り」という命の危険にさらされながらも、医師になる夢を抱いています。
(*)アルビノ:生まれつきメラニン色素が少ないため、肌や髪、目の色が薄くなる遺伝性の病気。視力低下や眩しさを感じやすいなど目の症状を伴うことがある。

少女ニルマラとケンドは、ネパール大地震により2人とも片足を失いました。困難を共に乗り越え、それぞれの夢を抱く無二の親友です。

ケニアの少年チャールズは、生まれつき視覚障がいを持ちながら、同じ障がいを持つ憧れのランナーのように、パラリンピックでメダルを獲る夢に向かって走っています。

アントニオは、ASD・注意欠如多動症(ADHD)・聴覚障がいを抱える元気な少年。生後間もなく養子として迎えられ、全力で愛情を注ぐ両親とブラジルで暮らしています。

パスカル・プリッソン監督は、この映画を「涙を誘うような作品ではなく、人々に希望を与える作品にしたい」と語っています。
その言葉の通り、作品に映し出されるのは、悲しみに暮れる姿ではありません。自らの足で前に進もうとする子どもたちと、それを信じて見守る大人たちの姿でした。
ハンディキャップがあるから悲しむのではなく、「今」を懸命に生きている。その眩しいほどの姿は、私の心に小さな明かりを灯してくれました。
悲観するよりも、目の前にある「命の輝き」を見つめる
さまざまな背景を持つ子どもたちと、彼らを支える大人たちの言葉は、国境や文化を越えて私たちの心にまっすぐ響いてきます。
自身についてだけでなく、障がい全般について語りたいと言うモードは、同じ境遇の子どもを持つ親に向けて、こんな言葉を贈ります。
「ハンディキャップがあるからといって、消極的や悲観的になる必要はない」
「あなたの子は、今もそこで生きている」
この言葉は、親が子どもをどう見ているかを、やさしく問うているように感じました。
ハンディキャップがある子どもは、欠けている存在ではない。今ここに生きていて、ちゃんと世界の一部として息をしている。その命の輝きを、私たちは見過ごしていないでしょうか。


チャールズの母親も「障がいを悲しまない」と力強く語ります。彼女の眼差しには、わが子への確かな信頼と、揺るぎない愛情が宿っていました。
私自身を振り返ると、息子の特性や不登校という状況に対して「この子は苦労するだろう」「幸せな人生を送ることは難しいかもしれない」と、無意識に決めつけていたのかもしれません。
親である私の不安や悲しみが、知らず知らずのうちに、子どもの頭上を覆う暗い雲になっていたのではないか。そう気づかされ、胸が締め付けられるような感覚がありました。
子どもは本来、誰しも希望を持った光のような存在です。その光を明るく灯し続けるのも、消してしまうのも本人だけの問題ではなく、取り巻く環境しだいなのかもしれません。
愛情があるからこそ心配になるけれど、その愛情を「不安」という形ではなく、「信頼」という形で子どもに手渡せているだろうか。
映画を観ながら、私は自分自身に問いかけていました。
ひとりの力で生きることだけが「自立」ではない

子育てをしていて、「親がいなくなった後のこと」を考え、不安を抱いたことはないでしょうか。私の中には、常にこの不安が胸に重くのしかかっていました。
しかし、サビエルの母親の言葉が、私の不安を和らげてくれました。彼女は息子に向けた想いを語ります。
「楽しい生活を送り、幸せになってほしい」
「私がいなくなっても、誰かに導かれるといい」
——誰かに導かれるといい。
この言葉は、私にとって大きな救いでした。私たちは、自立=ひとりの力で生きていくこと、と捉えがちです。だからこそ、子どもにいろいろと教え込み、完璧にひとり立ちさせなければならないと焦ってしまいます。
そうではなく、社会の中で人とつながり、必要なときには助けを求められること。誰かに導かれながら、ときには誰かを導きながら生きていくこと。それこそが、本当の意味での自立なのかもしれません。
私がいなくなっても、息子が信頼できる誰かとつながり、共に笑い合って生きていけるのならそれでいい。彼が自分らしくいられる場所が、この社会のどこかにあるはずだと思えたとき、心がふと軽くなるような気がしました。

必要なのは「同情」ではなく「機会」

チャールズは静かに、しかし力強く、自分の言葉で語ります。
「僕たちは皆、平等で大切な存在。たとえ目が見えても見えなくてもね」
「障がいとは無力じゃないと証明するために全力を尽くす」
また、彼が目標とするランナーのヘンリー・ワンヨイケも、こう言葉を寄せます。
「私たちは平等な機会を求めて戦っているのであって、同情を求めているのではない」
彼らは決して「かわいそうな人」として同情されたいわけではありません。自分の力を発揮し、居場所を見つけるための機会を求めているのです。
障がいは、能力の欠如ではありません。それぞれに違う形をしているだけで、誰もが自分だけの可能性や才能、そして社会に貢献できる力を持っています。
目の前にいる私の息子も、学校というシステムに合わなかったかもしれないけれど、何もできなくなったわけではありません。好きなことについて語るときの目の輝きや、独特で繊細な感性は、間違いなく彼だけが持つ力です。
社会がハンディキャップを持つ子どもたちを、支援される存在として捉えるのではなく、彼らの能力を発揮できる機会と居場所をどうやって創っていくか。
それは障がいの有無に関わらず、すべての子どもたちの光を灯し続けるために、社会全体で考えていくべき大切なテーマです。
まずは、私たち大人が「希望」を持つ

インタビューの中で、パスカル・プリッソン監督は「あまりにも胸が痛む内容だったため、あえて映画には入れなかったシーンがある」と明かしています。
映画で人々が見せる笑顔や前向きな姿の裏には、カメラには映らない過酷な現実があるはずです。それは、私自身も同じだからです。
ハンディキャップを抱えて過ごす日々には、本人や親にしかわからない胸がつぶれるような夜や、逃げ出したくなるような瞬間が確かに存在します。
しかし、だからこそ彼らの姿は教えてくれます。「希望」とは、何の不安や問題もない未来のことではなく、ままならない現実や困難の中でも「それでも前を向こうとする意志」そのものだと。
まだ起きていない幻の未来を恐れるのをやめて、まずは私たち大人が希望を持つことから始めてみませんか。
子どもの可能性を信じる。
自分が持っている愛情のすべてを、ただまっすぐに子どもへ注ぐ。
焦らず、悲しまず、子どもが本来持っている光を一緒に灯し続けていく。
私は静かに、そう決意しました。
皆さんの目の前には、今、どのような光がありますか。
その光に、私たちはどのような言葉をかけ、どう寄り添っていけるでしょうか。
今回ご紹介したドキュメンタリー映画『ウィー・ハブ・ア・ドリーム』は、2026年8月7日(金)よりヒューマントラストシネマ渋谷ほか全国順次ロードショー。
フランスで120万人超えの動員を記録した『世界の果ての通学路』や『GOGO(ゴゴ)94歳の小学生』などを手がけたパスカル・プリッソン監督が、再び世界に希望を届ける最新作です。
ぜひ劇場でご覧いただき、明日を照らす光を受け取っていただければと思います。

8.8(sat) 俳優 塩谷 瞬さん『ウィー・ハブ・ア・ドリーム』公開記念トークイベント:
https://unitedpeople.jp/dream/archives/15761
『ウィー・ハブ・ア・ドリーム』公式HP:
https://unitedpeople.jp/dream/
チケット購入はこちら:
https://ticket.moviewalker.jp/film/092906?from=official
映画『ウィー・ハブ・ア・ドリーム』
劇場公開日:2026年8月7日(金)
監督・脚本:パスカル・プリッソン
撮影:シモン・ワテル
編集:エリカ・バロシェ
音楽:シルヴァン・ゴールドベルグ/マッテオ・ロカシュッリ
製作:Eady East Prod
製作総指揮:マリー・トジア
プロデューサー:ルイーズ・ヴァンガタラマン/エディ・ヴァンガタラマン
配給:ユナイテッドピープル
96分/フランス/2023年/ドキュメンタリー



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