バルバドス国ミア首相「私たちを結びつけるのは、その共通の“人間性”」

国連HPより:https://gadebate.un.org/en/79/barbados

バルバドス(英語: Barbados)は、カリブ海、西インド諸島内の小アンティル諸島東端にある共和制国家です。独立以来、英連邦王国の一つでありましたが、2021年11月30日に共和制に移行しました。
ラテンアメリカ、カリブ海諸国全域において、最も議会制民主主義が定着した国であり、国際連合による人間開発指数では58位(2019年)に位置します。

現在、首相を務めるミア・アモール・モトリー首相は、小国の元首でありながら、国連や世界会議などの場で、不均衡な世界の脱却、気候変動による世界の危機、平和へ向かっていくための道筋を力強く率直に訴え続けています。

バルバドス国のミア首相 国連総会でのスピーチ

2024年9月27日に行われた国連総会でのスピーチを紹介します。
彼女は、正義や平和や希望を確保するためには、あらゆるグローバルな機構を変えること(=「リセット」)が緊急に必要であると語り、大国指導者らに対し、言葉だけでなく行動で示し、地球を救うための最前線に資源を投入するよう求めました。

信頼と希望は、世界の金融構造との関連よりも、今日の何十億人もの人々の幸福にとって重要です。資本へのアクセスが制限され、コストが不釣り合いに高いため、私たちがする必要があることが妨げられています。

資本の規模が不十分な上に、圧倒的な債務の重荷が、手に負えない状況によって、私たちに課されているため、世界の最貧国の政府や、多くの脆弱な中所得国の政府は、保健や教育、場合によってはインフラの整備よりも債務返済に多くの費用を割かざるを得ない状況へと追い込まれています。

人類家族のあまりにも多くにとって、冷たい地面がベッドであり、岩が枕になっています。あまりにも多くの人が空腹のまま眠りにつき、あまりにも多くの人がベッドさえ持っていないかもしれません。

したがって、私たちのリセットは、私たちが共有する人間性を反映し強化する、共通のアジェンダを集団で構築しなければなりません。私たちを結びつけるのは、その共通の‘人間性’なのです。

アフリカの兄弟姉妹たちは、”ウブントゥ(※)”の原則を正しく理解し、この総会の会期を利用して、簡素さこそが私たちが目指すものであることを思い出させてくれました。

“あなたがいるから私がいる。私たちがいるから私がいる。
私の幸福はあなたの幸福と結びついており、私たちの集団的な幸福は母なる地球の幸福と結びついています。

(※)南アフリカのズールー語で「他者への思いやり」「皆があっての私」を意味する

グローバルサウスの膨大な債務

背景にあるのは、グローバルサウス(※)の債務の問題です。
(※)インドやインドネシア、トルコ、南アフリカといった南半球に多いアジアやアフリカなどの新興国・途上国の総称

グローバルサウスの国々は、15世紀後半から進んだ植民地支配によって、その地域の資源、労働力、経済を宗主国に奪われてきました。第二次世界大戦後、多くの植民地が独立を果たしましたが、独立後の国家は、インフラ整備や国家建設のために国際金融機関や先進国から融資を受け始めます。表面上は独立国同士としての取引のように見えますが、形を変えた支配が続きます。

その後、冷戦下の政治的援助、1980年代の債務危機、そして21世紀の新たな融資の潮流に至るまで、多くの要因が絡み合い、膨張する債務。直近では新型コロナのパンデミックや気候変動への対応(例:災害復旧、再生可能エネルギーへの移行)は、脆弱なグローバルサウスの国々にとって大きな財政的課題となっています。

2023年には途上国の対外債務返済額が過去最高の1兆4,000億ドルに達しました。このうち、利払いは前年から約33%増加し、4,060億ドルとなり、多くの国で保健医療、教育、環境など重要分野の予算を圧迫しています。

“人間性”が均衡な未来への扉

植民地支配から脱したものの、いまだに不平等な世界は続いています。

ミア首相の訴えるリセットはいくつもありますが、例えば国連から始まる制度改革を特徴とし、一部が正会員で、他は部分会員、パートタイム、または臨時会員という参加国の権利の不平等な仕組みをリセットすること。
また今までの先進国に有利な国際金融のルールや仕組みのリセットをして、国際金融機関への平等な参加、債務の減免、世界の資本の再配分など、均衡な金融システムへの移行をしていくことなど、他にも様々なリセットを提案しています。

ミア首相のスピーチは、冷たい地面をベッドにしながら、空腹や寒さで眠れない人々が同じ地球上にいることを率直に訴えます。

歴史上、類を見ない変化の渦にいる私たちは、今まで信じてきたシステムや概念が崩れている中、拠り所を失い、行先が見えない不安の中にいると感じることがあります。
私たちの持つ“人間性”という側面が、人類全てにとって均衡な社会への扉を開くかもしれません。

[参考情報]
国連HP
バルバドス国家HP
ミア首相公式Instagram

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