HOPIX(ホピックス)|5月12日週の「希望の政治」トピック

HOPIUSの新企画「HOPIX(ホピックス)」では、1週間の中で見つけた“希望の兆し”をカテゴリー別にお届けします。
今週は【政治】カテゴリーから、心に残る2つのトピックをピックアップしました。
ホピックス1
「世界一貧しい大統領」ホセ・ムヒカ氏、静かに旅立つ
2024年5月13日(火)、ウルグアイの元大統領ホセ・ムヒカ氏が、89歳で逝去されました。
質素な暮らしと深い哲学で、世界に希望を遺したリーダー。その人生から、いま私たちが学べることは数多くあります。
2010〜2015年の在任中も、首都の公邸には住まず、郊外の小さな農場で生活。「世界一貧しい大統領」として知られ、消費社会を問い直す姿勢は、国境を越えて多くの共感を集めました。
以下、The New York Timesによるインタビュー記事より抜粋したムヒカ氏のインタビューの一部をご紹介します。
──人類は変われると思いますか。
変われるかもしれません。けれども市場の力は強大です。市場は私たちの本能を支配する潜在的な文化を創り上げました。
それは主観に訴えつつも、意識されません。私たちを貪欲な消費者に仕立て上げました。私たちは買うために生き、働いている。支払うために生きています。クレジット(信用貸し)は宗教です。というわけで私たちは、おかしくなっています。
──あまり希望は抱いていないように聞こえますが……。
一人の人間としては、希望を持っています。人間を信じていますから。けれども、考え出すと、悲観的になってしまうのです。
──とはいえ、あなたの演説には前向きなメッセージが込められていることが多いように感じます。
ええ。人生は美しいものですから。波瀾万丈でも、私は人生を愛しています。
けれどもいま、その人生を失いつつあります。この世を去るときが近づいているからです。私たちは、人生にどんな意味を与えられるでしょう。他の動物と違って、人は自らの人生に目的を見出すことができます。
あるいは、見出せないかもしれません。もし見出せなければ、市場に一生、支払い続ける人生を送らされます。
でも見出すことができれば、生きる糧を得ることができます。何かを研究する人、音楽が好きな人、スポーツが好きな人もいます。何でもいいのです。何か、人生を満たしてくれるものがあればいいのです。
──大統領の任期中、なぜ自宅に住むことを選んだのですか。
官邸には、封建制の文化的な名残があるからです。赤絨毯が敷かれていたり、ラッパを吹く人たちがいたりして。それに大統領は従来、称賛されるのが好きですからね。
ドイツに行ったときのことです。ベンツに乗せられたのですが、扉の重さだけで3000kgはあったでしょうか。車の前にはバイクが40台連なり、さらに後ろに40台といった具合で、恥ずかしかったのなんの……。
官邸は4階建てで、お茶を飲むのに、3ブロックほど歩かなければなりません。無駄もいいところです。高校にするには、いい建物だと思いますよ。
© 2024 The New York Times Company
ムヒカ氏の言葉は、私たちの価値観を静かに揺さぶります。
商業主義の只中でも、人間の尊厳と希望を信じ続けたその姿勢に、改めて心を打たれます。
ホピックス2
「寡頭政治と闘う」サンダース&AOCの全米ツアーが熱狂的支持を集める

米国の上院議員バーニー・サンダース(83歳)と、下院議員アレクサンドリア・オカシオ=コルテス(35歳)が、全米を巡る「寡頭政治(※)と戦うツアー」を2月下旬より開始。
(※)寡頭政治(かとうせいじ)とは、少数の人が政治的な権力を掌握する政治体制のことです。具体的には、富裕層、権力者、特定のグループなどが、民主的な手続きや国民の意思とは関係なく、自分たちの利益のために政治を支配する状況を指します。
赤い州(共和党地盤)・青い州(民主党地盤)を問わず、大きな支持を集めています。
掲げるメッセージは、
- 医療保険の無償化(メディケア・フォー・オール)
- 大学や職業訓練校の授業料無償化
- 手頃な住宅の供給
- 富裕層への課税強化
といった“誰ひとり取り残さない”社会への提案。政治的分断が続くアメリカで、多くの市民の共感を呼び起こしています。
以下、The New York Timesの記事より抜粋した記事をご紹介します。
ロサンゼルスでの集会には、およそ3万6000人が参加。デンバーでの集会には、3万4000人以上が参加。カリフォルニア州サクラメント近郊での集会には、3万人ほどが参加した。
主催者発表で計20万人以上にもなる観衆が集まり拍手喝采を送っているのは、「寡頭政治と闘う」ツアー中のバーニー・サンダース上院議員(無所属)とアレクサンドリア・オカシオ・コルテス下院議員(民主党)が語る激烈な反トランプ、反億万長者のメッセージだ。
サンダースは4月15日、カリフォルニア州フォルソムで開かれた集会の参加者たちにこう語りかけた。
「この国のいたるところで、人々が苦しんでいます。毎日毎日、ただ生きるために。兄弟姉妹、世界史上で最も裕福な国で、われわれはもっとずっとマシな暮らしができるはずですよ!」
世界一の金持ちが連邦政府で権力を振りかざして自分のビジネスを利するような時代に合わせて、サンダースはその古いメッセージを微調整している。すると民主党員たちが、そのメッセージにしっかり耳を傾けるようになったのだ。
フォルサムでの集会の前日、サンダースとオカシオ・コルテスが立ち寄ったアイダホ州ナンパでの集会には1万2500人が参加したとサンダースの広報官は発表している。共和党支持者が圧倒的多数のアイダホ州では、バラク・オバマが2008年に遊説に訪れて以降で最大の政治イベントになったという。
未知数なのは、ふたりがこの勢いを保ち、それを来年の中間選挙での勝利に結びつけられるかどうかだ。
フォルサムでの集会の前日の4月14日、サンダースとオカシオ・コルテスが立ち寄ったアイダホ州ナンパでの集会には1万2500人が参加したとサンダースの広報官は発表している。共和党支持者が圧倒的多数のアイダホ州では、バラク・オバマが2008年に遊説に訪れて以降で最大の政治イベントになったという。
両者とも今年最初の3ヵ月で莫大な額の寄付金を集めたことが、新たな財務報告書から明らかになった。サンダースは1150万ドル(16億円超)、オカシオ・コルテスは960万ドル(14億円弱)を取りつけているのだ。
© 2025 The New York Times Company
アイダホ州ボイシ地域のNBC系のテレビ局『KTVB 7』:
「彼らの貪欲さを終わらせる」バーニー・サンダース、アイダホ州アレクサンドリア・オカシオ=コルテス」
“希望の政治”は、古い仕組みに挑みながら、まだ見ぬ未来を拓こうとするところに生まれます。
声をあげ続ける人々がいる限り、政治にもまた、希望は宿る。そう感じさせる出来事でした。
来週もまた、希望のトピックをお届けします。
あなたの一週間にも、小さな光がともりますように。