HOPIX(ホピックス)|6月9日週の「希望の地球」トピック

2024年10月の西表島の海中にてサメを発見した

地球の未来を考えるとき、私たちはまず“海”に目を向ける必要があります。
今週、フランス・ニースで国連海洋会議2025が開幕しました。
今回、特に注目されたのは、海をめぐる深刻な課題に対して、市民や一部の政治家たちが見せた「海を守る」という強い意思でした。

国連海洋会議2025、フランス・ニースで開幕

 2025年6月9日、フランス南部の都市ニースで「国連海洋会議(UNOC3)」が開幕しました。 世界120の国と地域から首脳級を含む代表が集まり、海洋環境の保全と持続可能な利用をテーマに議論を交わしています。会議は、SDGsの「目標14(海の豊かさを守ろう)」の実現を後押しする場として開催され、「ニース海洋行動計画」の策定が期待されています。

今回掲げられた3つの優先課題は以下の通りです:

  • 海洋に関する国際プロセスの最終化と実行
  • 持続可能なブルーエコノミーのための資金動員と連携強化
  • 政策づくりを支える海洋科学と知識の普及

こうした議論の背景には、温暖化、海洋プラスチックごみに加え、「深海資源採掘」への国際的な懸念が大きく取り上げられています。

深海に眠るレアメタルと、その代償

【NHKニュースより抜粋】
電気自動車のバッテリーなどに不可欠なコバルトやニッケルといったレアメタルは、深海4,000〜5,000mの海底に存在しています。
その採掘に関心を寄せる国が増える一方、周辺の生態系が極めて脆弱であることや、採掘時に発生する粉塵が海洋環境へ悪影響を及ぼす懸念が高まっています。

国連のグテーレス事務総長は「深海を無法地帯にしてはならない」と警鐘を鳴らし、フランスのマクロン大統領は「未知の場所の開発はあり得ない」と発言。
開幕直前には、NGOや市民による海底開発の一時停止を求めるデモ行進も行われました。
▶[出典:NHKニュース(2025年6月11日)]
https://www3.nhk.or.jp/news/html/20250611/k10014831661000.html

漁業者の声と包摂的な海洋経済

【国連ニュースより抜粋】
会議のもう一つの焦点は、小規模漁業者の保護とブルーエコノミー(持続可能な海洋経済)の促進です。
FAO(国連食糧農業機関)によると、世界では約6億人が漁業や養殖業を生業としており、特に島嶼国や沿岸地域では海が命の源になっています。

「私たちは海から切り離されているのではなく、海の一部なのです」と語ったのはFAOのマヌエル・バランジ氏。
その言葉どおり、海洋の保全と経済のバランスを取る新たなルールづくりが、世界の喫緊の課題となっています。なお、今回の政治宣言は、「昆明・モントリオール枠組み」とも整合する内容となる予定です。
▶[出典:UN News(2025年6月11日)]
https://news.un.org/en/story/2025/06/1164306

昆明・モントリオール枠組み
2022年の国連生物多様性会議(COP15)で採択された国際的な枠組みで、2030年までに陸と海の30%を保全する「30by30目標」などを盛り込み、生物多様性の損失を止め、回復を目指す世界的な合意。

編集後記|“見えない海”を守る想像力

私は昨年、沖縄・西表島でシュノーケリングを体験しました。
透明な海の中で、サンゴが白骨化していたり、魚が少なくなっている光景に言葉を失いました。
15年前に訪れた本土の海と比べて、明らかに“海が変わっている”ことを実感しました。

私たちは普段、海の中の変化を直接見る機会が多くありません。
だからこそ、こうした国際会議を通じて、世界で何が起きているのか、どんな声が上がっているのかを知ることはとても重要です。未来の海を壊すのではなく、育てていく選択を。
それは科学だけでなく、想像力からも始まるのだと、今回の会議は教えてくれました。

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