つながる世界、変わるエネルギー。希望は多様性と連帯から|Japan Energy Summit 2025レポート

2025年6月、東京ビッグサイトでアジア最大級のエネルギー国際フォーラム「ジャパン・エネルギー・サミット」が開催されました。
テーマは「エネルギー安全保障」と「持続可能性」。
世界中の政府関係者、エネルギー企業、研究者たちが集まり、気候変動対策やエネルギーの未来について、現実的な視点で議論が行われました。
世界が注目した技術コンテスト「エネルギー・イノベーターズ・チャレンジ」
特に注目を集めたのが、未来のエネルギー技術を競う国際コンペ「エネルギー・イノベーターズ・チャレンジ」。
2つの部門に分かれており、
- 若手研究者が挑む「Future Leaders(フューチャー・リーダーズ)」部門
- スタートアップ企業が対象の「Pioneers & Disruptors(パイオニア&ディスラプターズ)」部門
各部門の受賞者は、エネルギーの未来にリアルな革新をもたらす存在として大きな注目を集めました。
「Future Leaders(フューチャー・リーダーズ)」部門受賞者
Nor Aziana Aliteh さん(Hioki E.E. Corporation)

【テーマ:エネルギーを正確に“測る”技術の進化】
Norさんは、マレーシア出身の女性若手エンジニア。日本の計測機器メーカー「Hioki(ヒオキ)」に所属し、次世代の「測定技術」をテーマに挑戦しました。
発電所や再生可能エネルギー施設では、「どれだけ正確に状態を把握できるか」が、効率や安全性に直結します。Norさんは、リアルタイムにデータを取得・分析できる機器とシステムの開発に取り組んでいます。
彼女の技術は、水素社会の実現にも欠かせない“見えない基盤”。未来のインフラを支える縁の下の力として高く評価されました。
「正確な測定が、安心で持続可能なエネルギー運用のカギになる」
——Nor Aziana Alitehさん
「Pioneers & Disruptors(パイオニア&ディスラプターズ)」部門受賞者
西川昭秀(Aki Nishikawa)さん(BIOTECHWORKS-H2 CEO)

【テーマ:廃棄物から水素を生み出す“循環型”エネルギー社会へ】
西川さんは、ゴミや廃棄物をエネルギーに変えるという画期的な技術で受賞。
彼が率いるBIOTECHWORKS-H2は、廃棄物をAIとIoTで分析・制御し、水素ガスを生成する完全循環型プラントを開発しています。
さらに、その副産物(スラグや金属)も再利用することで、ごみを資源に変える“ゼロエミッション”社会を目指しています。この技術は、ゴミ問題とエネルギー問題という2つの課題を一度に解決しうる、非常に現実的かつ希望あるソリューションです。
「廃棄物からエネルギーを生み出す。それが未来の当たり前になる」
——西川昭秀さん
両者に共通するのは「今すぐ動かせる技術」
Norさんと西川さんに共通しているのは、単なる夢物語ではなく、“今すぐ社会に導入できる”レベルの技術だということ。
- Norさんの計測技術はすでに発電所や送電インフラ向けにテストされ、実装に向けた連携も始まっています。
- 西川さんのプラントはすでに実証段階にあり、自治体との協力によって社会実装が進みつつあります。
Japan Energy Summit 2025で最も印象的だったのは、脱炭素や資源循環の取り組みが「遠い未来の話」ではないということ。若手の研究者や新しい企業たちが、「希望のある技術」を現場で実装し始めているという事実です。
HOPIUSの視点:未来をつくるのは多様性と連帯
エネルギーは、社会のすべてを支える“土台”です。電気・ガス・水といったインフラがきちんと届いてはじめて、人間らしく、文化的で、健全な暮らしが可能になります。
しかしこれまで、世界のエネルギーは一部の先進国が大量に消費してきました。これからは、地球に生きるすべての人が等しく、人間らしい営みを続けられるよう、エネルギーの使い方そのものを見直す時代に入っています。
今回のサミットで印象的だったのは、多様な国籍・性別・文化的背景を持つ人たちが、エネルギーの問題にともに挑んでいたことです。希望の技術は、特定の誰かではなく、「多様な誰かたち」の手によって育まれていると実感しました。
国や立場を越えて連帯すること。地球規模でエネルギーのあり方を考えること。
それこそが今、世界に必要とされているビジョンだと、私たちは強く感じました。
