【書籍紹介】それはわたしが外国人だから? 日本の入管で起こっていること

本の帯や本文の挿絵にも猫が登場することにちなんで、猫とともに撮影。 photo by 柳澤芙美

【Touch Hope
本、映画、展示、イベント、場所——。
世界には、人の可能性や社会の前向きな変化に気づかせてくれる作品や体験があります。
「Touch Hope」は、ホピアス編集部が出会った“希望に触れられる”モノやコトをご紹介するシリーズです。
一冊の本、一つの映画、一つの場所との出会いを通じて、世界を少し違った視点で見つめ、新たな思考や行動につながるきっかけをお届けします。

世界難民の日

6月20日は「世界難民の日」です。

私たちは、日本に暮らす難民や移民の人たちについて、どれだけ知っているでしょうか。

今や日本には400万人以上の外国籍の人が暮らしています。(※1)
地域のお店で働く人、近所に住む人、子どもが通う学校の同級生。難民や移民の人たちは、すでに私たちの暮らしのすぐそばにいます。
それでも、その人たちがどのような状況で暮らし、どんな困難を抱えているのかを知る機会は決して多くありません。

(※1)令和7年末現在における在留外国人数について(出入国在留管理庁)

先日、私は「難民・移民フェス」に参加しました。
このイベントは難民・移民フェス実行委員会が主催し、2022年にスタートしました。厳しい入管政策や難民認定基準などによって困難な状況に置かれている外国ルーツの人々について、「会って話せば普通の『ともだち』になれる」という気づきを広げることを目指しています。

会場では、さまざまな国にルーツを持つ人たちが、自国の料理や雑貨、文化を紹介してくれました。珍しく楽しい各国の料理を囲みながら交流する時間は、とても温かく、「誰もが安心して暮らせる未来」を少し先取りして見せてもらったような気持ちになりました。

そこで出会ったのが、今回ご紹介する一冊です。
筆者の安田さんがサイン会を行っていました。

会場でサイン会を開いていた安田さんと写真を撮っていただいた(左:ホピアス 栁澤(やなぎさわ)、右:筆者の安田菜津紀(やすだ・なつき)さん

『それはわたしが外国人だから? 日本の入管で起こっていること』は、2026年6月に改訂版が出版されました。2024年に施行された改正入管法などを踏まえ、内容がアップデートされています。

子どもや外国籍の方も読みやすいようにルビが振られており、難民・移民フェスの運営にも関わるイラストレーター・金井真紀さんの挿絵が随所に添えられています。

小川の向こうへ行けない理由

本書では、4人の難民・移民の方々の実話が紹介されています。
どのエピソードも胸に迫るものでしたが、特に印象に残ったのは、日本で生まれ育ったリアナさんの話でした。

在留資格がない状態では、

  • 住んでいる都道府県の外へ出る際に入管への申請が必要になる
  • 健康保険に加入できず、医療費が高額になる
  • 仮放免中の家族は働くことができず、教会などか支援団体からの支援に頼らざるを得ない

といった厳しい制約があります。

リアナさんは埼玉県と東京都の境界近くで暮らしていました。よく遊んでいた公園の真ん中には小川が流れていて、その向こう側は東京都でした。
友達は自由に行き来できます。けれどリアナさんは、その小川を越えることができません。

なぜ越えられないのかを説明しても、友達にはなかなか理解してもらえません。
「うっかり隣の県に入ってしまったらどうしよう」
そんな不安を抱えながら暮らす日常があります。私には、その緊張感の中で毎日を過ごす感覚を想像することができませんでした。

国に帰れば命の危険がある人もいます。
また、リアナさんのように日本で生まれ育ち、日本を故郷だと思っているにもかかわらず、在留資格がないことで収容の対象になってしまう人もいます。

共に生きる社会を選びたい

私たちは、日本国籍を持つことで、多くの権利や自由を空気のように享受しています。
自由に移動できること。
働けること。
学校へ通えること。
病気になれば医療を受けられること。
将来の夢や職業を選べること。

それらは決して当たり前ではないのかもしれません。
生まれた国や置かれた立場によって、これほど大きな違いが生まれてしまう現実があります。

そのことを知ることは、難民や移民の人たちへの理解につながり、「一緒に生きること」を歓迎できる社会への第一歩になるのではないでしょうか。

私たちはよく「多様性を尊重する社会」と言います。その言葉の中に、日本で暮らす外国籍の人たちは含まれているでしょうか。

困っているときに手を差し伸べられる人でありたい。そして、自分が困ったときには助けを求められる社会であってほしい。そんなことを考えさせてくれた一冊でした。

『それはわたしが外国人だから? 日本の入管で起こっていること(改訂版)』
安田菜津紀(著)、金井真紀(絵と文)
ヘウレーカ刊(2026年6月10日発売) 2,090 円(税込
https://www.heureka-books.com/books/2381

<著者紹介>

安田 菜津紀 (やすだ・なつき)
1987年神奈川県生まれ。フォトジャーナリスト。認定NPO法人Dialogue for People(ダイアローグフォーピープル/D4P)副代表。16歳のとき、「国境なき子どもたち」友情のレポーターとしてカンボジアで貧困にさらされる子どもたちを取材。現在、東南アジア、中東、アフリカ、日本国内で難民や貧困、災害の取材を進める。東日本大震災以降は陸前高田市を中心に、被災地を記録し続けている。著書に『国籍と遺書、兄への手紙―ルーツを巡る旅の先に』(ヘウレーカ)、『遺骨と祈り』(産業編集センター)他。現在、TBSテレビ『サンデーモーニング』にコメンテーターとして出演中。

金井 真紀 (かない・まき)
1974年千葉県生まれ。文筆家・イラストレーター。「多様性をおもしろがる」を任務とする。著書に『はたらく動物と』(ころから)、『パリのすてきなおじさん』(柏書房)、『虫ぎらいはなおるかな?』(理論社)、『世界はフムフムで満ちている』(ちくま文庫)、『日本に住んでる世界のひと』(大和書房)、『おばあちゃんは猫でテーブルを拭きながら言った 世界ことわざ紀行』(岩波書店)、『テヘランのすてきな女』(晶文社)、『世界でくらすクルドの人たち』(福音館書店)など。難民・移民フェス実行委員。

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