新卒1年目、仕事の舞台はアフリカ。AAIC・高澤美優さんの社会を変えるインパクトキャリア

世界の分断、気候危機、貧困、紛争。

世界は今、複雑で解きにくい社会課題を同時に抱える時代に入っています。一方で、その課題に挑む人材は、圧倒的に不足しています。前回に続き、Professionals for Impact(PFI)とホピアスの共創企画として、「社会課題起点のキャリア」を歩むプロフェッショナルたちの意思決定をひも解いていきます。

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今回お話を伺ったのは、2026年4月に新卒として入社し、株式会社AAIC Japan(以下、AAIC)にて、アソシエイトとして働く高澤美優(たかざわ・みゆ)さんです。

入社からわずか2カ月でプロジェクトチームのメンバーとしてアフリカへ出張。現地消費者を訪れてリサーチを行い、クライアントへの発表も担当するなど、実務の最前線に立っています。

AAICは、2008年の創業以来、「成長に必要な知恵、資金、人材を直接提供する」ことを掲げ、徹底した現場主義を貫いてきました。現地の企業や関係機関との対話を重ね、ローカルエリアにも深く入り込みながら、現地のニーズや課題を捉えています。戦略を描くだけでなく、事業の実行までハンズオン(伴走型)で支援し、日本の強みと新興国の成長を結びつけるパイオニアとして、市場を切り拓いています。

社会課題に関心があっても、新卒ではまずビジネススキルを磨くことを優先し、社会課題の解決に直接関わる仕事を選ぶ人は、まだ多くありません。そんな中で、自身の関心に近い社会課題領域からキャリアを始める決断をした高澤さんは、どのような軸で進路を選び、AAICと出会い、いま何を感じているのでしょうか。

その歩みを通じて、新卒から始めるインパクトキャリアと、社会課題の解決に関わる仕事の多様な可能性を考えます。

この記事でわかること

  • 新卒からインパクトキャリアを歩むまでの道のり
  • 民間企業で社会課題の解決に取り組む面白さとやりがい
  • 思い描いた進路が閉ざされたとき、新たな道を切り拓く方法
高澤美優さんのプロフィール

アジア・アフリカの新興国とともに発展するAAICグループ

2025年8月のTICAD9のMoU披露式の様子(提供:AAIC)

2025年8月、横浜で開催された第9回アフリカ開発会議(TICAD9)。日本政府が主導し、国連や世界銀行などと共同で開催する、アフリカの開発をテーマとした国際会議です。

この舞台で、アフリカと日本の企業をつなぎ、具体的な協業を生み出したのがAAICグループです。AAICグループは、日本やアジア、アフリカなどの新興国市場に特化し、戦略コンサルティングと投資を両輪に事業を展開するグローバル企業グループです。

グループ会社のAAIC Investmentは、2013年に日本初のアフリカ専門の1号ファンドを組成。TICAD9では、運営するファンドの投資先から、成長著しいアフリカのスタートアップ9社を日本へ招聘。日本企業との関係構築やビジネスマッチングを進めました。その結果、南アフリカ最大の病院オンライン予約システムを運営するRecoMed社とエーザイ株式会社が、医療アクセスの向上に向けた協業で合意。ナイジェリアで医療機関や薬局向けの医薬品流通DXを手がけるDrugStoc社と、アルフレッサ ホールディングス株式会社との連携も実現しました。(詳細

さらに同月、AAICはナイジェリアを代表する企業グループDangote Industries、三井化学と、包括的な連携に向けたMOUを締結。製品の現地生産を通じ、アフリカの生活基盤の強化と地域産業の発展につながる事業の検討を進めています。
有望な企業を発掘して投資するだけでなく、日本企業と結び、国境を越えた事業へ育てる。AAICは、アフリカ市場の可能性に早くから着目し、新たな市場を切り拓いてきました。

「日本を良くするためには、成長が必要だ。そのためには、日本企業や日本人が、成長する新興国とともに発展していく必要がある」

AAICグループは、代表の椿進(つばき・すすむ)氏(※1)が2008年に創業し、この考えのもとで事業を展開してきました。現在は、シンガポール、東京、上海、グルガオン(インド)、ナイロビ(ケニア)、ラゴス(ナイジェリア)、ヨハネスブルグ(南アフリカ)、キガリ(ルワンダ)、カイロ(エジプト)、アルーシャ(タンザニア)の世界10都市に拠点を構え、「戦略コンサルティング」「ファンド(投資)」「人材・テクノロジー」の3事業を通じて、新興国や新分野に挑む企業を支援しています。

特徴は、戦略を描くだけでなく、自ら事業主体となって現地に入ることです。グループ会社のOSTI Globalは、ルワンダで約200ヘクタールのマカダミアナッツ農園と加工事業を運営し、約350人の雇用を創出。タンザニアでは約1,760ヘクタールの農園を基盤に、電気や通信、飲料水、教育、医療を地域へ届けるプロジェクトに取り組んでいます。

ここからは、高澤さんが新卒1年目から立つ、アフリカビジネスの最前線に迫ります。

(※1)椿進(つばき・すすむ)氏

アジア・アフリカ・インベストメント&コンサルティング(AAIC)代表取締役社長/代表パートナー。ボストン コンサルティング グループ(BCG)で15年間、事業戦略やM&A、新規事業開発などに従事。2006年より上場企業の代表取締役社長を務め、タカラトミー、竜の子プロダクション、アトラスなどの社外取締役を歴任。2008年にAAICを創業し、2014年には日本初のアフリカ専用ファンドを組成した。著書に『超加速経済アフリカ――LEAPFROGで変わる未来のビジネス地図』(東洋経済新報社)、共著に『日本企業のグローバル戦略入門』(プレジデント社)など。執筆・講演多数。

入社後2カ月でアフリカ出張へ

──現在、高澤さんは、どのようなプロジェクトに携わっていますか。

高澤さん 日本企業のアフリカ市場進出を支援するプロジェクトに携わっています。クライアント企業の成長支援に加え、その技術や強みをアフリカの課題解決にどう生かし、現地で持続可能な事業として成立させるかを考える仕事です。
市場や競合を調査し、現地のニーズを捉えながら、事業戦略の立案を支援しています。

──入社からわずか2カ月で、アフリカ出張にも参加したそうですね。

高澤さん はい。大手消費財メーカーのアフリカ進出に向けた調査プロジェクトにアサインされ、上司や先輩方と現地へ行きました。出張前には、まずデータベースなどを使って市場の全体像を調査しました。同時に、AAICが持つ人材ネットワークを生かし、アフリカで暮らす方々へのオンラインインタビューも行いました。そこで得た情報をもとに初期仮説を立て、現地調査を設計しました。

現地では企業を訪問したほか、消費者のご自宅にも伺い、生活様式やニーズ、事業を取り巻く環境を調査しました。事前に立てた仮説を検証し、事業化に必要な条件を明らかにするための定量調査も実施しました。

日本で資料を調べるだけでは、統計データや制度上の情報が中心になります。現地で人々の話を直接聞くことで、数字の背景にある暮らしや、事業を進めるうえでの障壁が具体的に見えてきました。

──現地調査では、どのようなことを意識していましたか。

ナイロビの中心地にはオフィスビルやショッピングモールがある 

ナイロビから少し離れるとトタン屋根の建物や未舗装の土道も見られる (提供:高澤さん)

高澤さん 日本での「当たり前」による先入観を捨て、現地の人々の声に耳を傾けることを意識しました。

日本側が重視する点や必要だと考える機能•サービスであっても、生活上の優先事項や文化的背景の違いから、現地では全く別の課題の方が切実かもしれません。 クライアントの製品が現地で受け入れられるためには、日常の困りごとを解決するだけでなく、流通や価格面などのハードルをクリアする必要があります。

だからこそ、現地の人々の生活やニーズを深く理解し、企業の強みをどう適応させるべきかを突き詰めました。現地を理解し、現地の立場で考え抜いた製品やサービスを届けること。それこそがアフリカの人々や社会の課題解決に繋がり、結果としてクライアントの持続的な成長にも貢献できるのだと考えています。

 ──新卒1年目として、どこまで仕事を任されたのでしょうか。

高澤さん 調査や分析だけでなく、自分が担当したパートについては、クライアントへの発表も任せていただきました。

先輩方からフィードバックをいただきながら進めましたが、発表する以上、自分の担当部分については誰よりも理解していなければなりません。なぜその結論に至ったのか、どの情報を根拠にしているのかを、自分の言葉で説明できるよう準備しました。

入社して間もない自分がクライアントの前で発表することには、かなり緊張しました。それでも、先輩の仕事を横で見るだけでなく、一人のプロジェクトメンバーとして責任ある仕事を任せていただいたことで、実践のなかで多くのことを学べたと思います。

 ── 新卒1年目として、どこまで仕事を任されたのでしょうか。プロジェクトを通じて、どのような学びや発見がありましたか。

高澤さん クライアントにとって本当に価値のあるインサイトを見つけることが、何よりも大切だと学びました。

学生時代は、自分が関心を持ったことを追究することが中心でした。しかし、プロフェッショナルとして仕事をする以上、クライアントが何を求めているのか、その事業にどのようなインパクトをもたらせるのかを考えなければなりません。これは、これまでの自分に足りなかった視点であり、今後さらに成長させたい部分です。もう一つ、大きな発見がありました。私は国際協力を学ぶなかで、支援する側とされる側という関係を超え、どのように共創を実現できるのかを考え続けていました。

今回のプロジェクトで、日本企業が私たちを介して現地の人々の声を聞き、「どうすれば価値を感じ、商品を選んでもらえるのか」を真剣に考えながら、進出の検討を進めていました。

日本企業にとって、この対話は新たな学びや成長につながると思います。一方、アフリカの人々にとっては、暮らしの選択肢が広がり、これまでの商品では解決できなかった課題の解決につながる可能性が生まれます。

事業づくりだからこそ可能な共創の形に、「私がやりたかったのは、これだ」と感じ、仕事への大きなやりがいとワクワクを覚えた瞬間でした。

「平和な日常を守りたい」——行動を重ねた学生時代

── 学生時代は、特に国際協力や平和活動への関心が高かったそうですね。

高澤さん 国際協力や平和活動に関心を持つようになった原点には、幼少期の経験がありました。

当たり前に続くように見える日常は、決して当たり前ではない。その尊さを実感することがあり、「平和な日常を守りたい」という思いを抱くようになりました。

その関心を行動に移し始めたのは、高校時代の科目「探究活動」です。アイルランドへの短期留学をきっかけに北アイルランド問題(※2)を知り、高校3年間、北アイルランドの平和構築について研究しました。

北アイルランド現地にて、スポーツを通じて平和構築に取り組む学生にインタビューを行った(提供:高澤さん)

現地を訪れると、紛争の終結から約20年がたっても、二つのコミュニティを隔てる大きな壁が残っていました。人々の往来は少なく、子どもたちが相手側のコミュニティとほとんど関わらないまま育つ場合もあると知りました。

同じ土地に暮らす人々が二つに分断されていること、そして武力紛争が終結した後も、その負の影響が長く残り続けることに衝撃を受けました。

この経験をきっかけに、平和構築についてさらに深く学びたいと考えるようになりました。

(※2)北アイルランド問題

英国領北アイルランドをめぐり、主にアイルランドとの統一を求めるナショナリストと、英国への帰属を支持するユニオニストの対立が激化した問題。1960年代末から約30年間続いた紛争では、3,500人以上が犠牲となりました。1998年のベルファスト合意(聖金曜日協定)によって大規模な武力紛争は収束。

先入観を持つ前に、アフリカを自分の目で見る

──東京大学へ進学後は、どのようなことを学びましたか。

高澤さん 国際関係論を専門的に学ぶため、東京大学へ進学しました。大学での学びは面白く、自分が知りたかったことを学問によって深めていく楽しさがありました。

一方で、専門課程に進む前に、アフリカを訪れることを決めました。日本では、「アフリカは遅れている」「アフリカの人々はかわいそうだ」といった見方が、まだ根強く残っていると感じていました。そうしたバイアスで物事を見たくない、まず自分の目で現地を見たいと思ったんです。

最初の渡航先に選んだのは、ルワンダでした。ルワンダでは1994年、ジェノサイドによって約80万人もの命が失われました。その後、国を挙げて復興を進め、近年は「アフリカの奇跡」と呼ばれる経済成長を遂げました。

私は平和構築を人生のミッションにしたいと考えていたため、大きな悲劇を経験しながらも、人々が希望を持って立ち上がったルワンダを、最初の渡航先に選びました。

現地では、困難な状況にあるシングルマザーの生活向上を目指し、雇用の創出や職業訓練などに取り組む「KISEKI(キセキ)」を訪ね、代表の山田美緒さんのもとで2週間のボランティアに参加しました。KISEKIは、シングルマザーが縫製によって収入を得る「Dress for Two」をはじめ、幼稚園や託児所、子ども食堂の運営など、母子を支える幅広い事業を展開しています。
私は幼稚園で子どもたちの保育に携わったほか、現地のNPOと協働し、中高生がルワンダの未来について考えるワークショップを企画しました。

ワークショップにてルワンダの中高生たちは、真剣に歌の歌詞を考え、国の将来を描いた(提供:高澤さん)

ワークショップでは、ルワンダで流行していたポップソングに乗せて、子どもたちに、ルワンダの好きなところや現在の社会課題、将来どのような国にしたいかを歌詞にしてもらいました。みんなで歌詞をつくり、ルワンダの希望ある未来を表現した一曲が完成しました。

子どもたちは、ルワンダをどういう国にしたいか?今抱えてる社会問題は?などの問いに、すごく積極的に答えてくれました。彼らの発想はとてもユニークで、無限の可能性を感じました。
このワークショップが、「アフリカの人たちと協働していきたい」と思うきっかけの一つになりました。

同時に、現地の他のNPOを見学する中で、強い思いや優れた活動を持ちながらも、資金や人材の不足に苦しむ姿も目の当たりにしました。国際協力を前へ進めるには、現場の情熱だけでなく、政府や民間企業、研究・教育機関をつなぐ仕組みが必要だと感じました。この時、官の役割に興味を抱きました。

異なる立場から、国際協力の現場を知る

SOASのキャンパスにて。多様な背景を持つ学生との出会いを通じ、世界を見る視野を広げた(提供:高澤さん)

──ルワンダから帰国した後、英国のロンドン大学東洋アフリカ研究学院(SOAS)(※3)へ留学しています。なぜSOASを選んだのでしょうか。

高澤さん ルワンダでの経験から、政府や民間企業、研究・教育機関など、異なる主体をつなぐ仕組みについて学びたいと考えました。また、アフリカの社会や文化への理解を深められることに加え、従来の西洋中心的な学問や価値観を問い直そうとする姿勢にもひかれ、SOASを選びました。

ここでの大きな学びの一つは、西洋的な価値観に基づく「正しさ」を一方的に持ち込むのではなく、現地の人々の暮らしや価値観を起点として物事を捉える姿勢の重要性です。そして世界各国から集まった友人たちとの出会いも、自分の価値観を大きく広げてくれました。

留学中には、西アフリカのシエラレオネにあるNPOと、在ウィーン国際機関日本政府代表部(※4)でインターンを経験し、帰国後は、国連開発計画(UNDP)(※5)のインターンとして実務に携わりました。在ウィーン国際機関日本政府代表部では、日本の外交官が国際機関の場で議論や交渉に臨む姿を間近で見ることができました。ロシアによるウクライナ侵攻が始まった時期でもあり、各国がそれぞれの国益や立場を背負いながら交渉する、国際政治の現実に触れました。

NPO、国際機関、日本政府。それぞれ異なる立場から国際協力の現場を見ることで、一つの課題にも多様な関わり方があることを学びました。

(※3)SOAS(ロンドン大学東洋アフリカ研究学院)

アジア、アフリカ、中東の地域研究や言語、開発学などを専門とする英国の高等教育・研究機関です。130を超える国々から学生が集まる、国際色豊かな環境でも知られています。

(※4)在ウィーン国際機関日本政府代表部

オーストリア・ウィーンに置かれた日本政府の外交機関。日本を代表し、国際原子力機関(IAEA)や国連工業開発機関(UNIDO)など、ウィーンに拠点を置く国際機関との交渉や政策調整、協力を担っています。

(※5)国連開発計画(UNDP)

貧困や格差、気候変動などの課題解決に取り組む、国連の主要な開発機関。世界約170カ国で、各国政府や民間企業、市民社会などと連携し、持続可能な開発やSDGsの達成を支援しています。



──留学先やインターン先は、どのように見つけたのですか。

高澤さん 大学の交換留学先を一つずつ調べたり、国連フォーラムのメーリングリスト(※6)から募集情報を探し、関心を持った団体には自分からメールを送りました。

「自分が学びたいことは何か。そのために、どこへ行くべきか」

その問いを起点に情報を探し、まだつながりのない組織の扉をたたいてきました。留学やインターンは、用意されたキャリアに乗るためではなく、自分が社会課題にどのような立場から関わりたいのかを確かめていく道のりだったと、振り返って感じます。

(※6)国連フォーラムのメーリングリスト

国連に関する知識を深め、議論や具体的な活動に参加するきっかけを提供する場。国連フォーラムの趣旨に賛同する方であれば、誰でも参加できます。詳細は国連フォーラム公式サイトをご覧ください。

外交官不合格をLinkedInで発信——思いを伝えた先に、次の道がひらく

大学卒業後の進路として外交官を目指していた高澤さんですが、最終選考の結果は「不合格」でした。

そこで、自分が学生時代に何を学び、どのような経験を重ね、これから社会にどう貢献したいのかを改めて言葉にし、「LinkedIn」で発信しました。

LinkedInでの高澤さんの投稿(一部編集・抜粋)

──外交官の選考に不合格となったことを、なぜLinkedInで発信したのですか。

高澤さん 当時は6月末で、多くの企業が2026年卒の新卒採用を終えていました。経済的な事情から大学院へ進むことも難しく、就職先を探さなければならない。一方で、自分の思いを曲げて妥協したくはありませんでした。

厳しい状況でしたが、「可能性は自分で切り開くしかない。まずは行動しよう」と思ったのです。

LinkedInに加え、「トビタテ!留学JAPAN」の同窓生が参加するFacebookグループなど、思いつく限りのネットワークに発信しました。外交官になれなかったからといって、「社会に貢献したい」「世界を少しでも平和にしたい」という思いまで失われたわけではありません。自分と組織の双方にとって本当に合う環境に出会えれば、その組織を通じて社会に貢献できるはずだと、自分の可能性を信じていました。

「私はここにいます」「こういう経験と思いを持っています」と、多くの人に知ってもらいたいと考えました。自分の存在を知ってもらうために、世界に向けて大きく旗を振るような感覚でした。

すると、多くの方がアドバイスをくださったり、「うちの会社に来ませんか」と声をかけてくださったりしました。本当にありがたかったです。

経験と志を見いだし、次の機会へつなぐ

高澤さん(左)とPFI代表の平井さん(右)

この投稿をきっかけに高澤さんの存在を知ったのが、社会課題に取り組む団体と、社会課題解決を仕事にしたい人材をつなぐProfessionals for Impact(PFI)代表の平井光城(ひらい・みつしろ)さんでした。

──高澤さんの投稿を、どのように知ったのでしょうか。

平井さん コロンビア大学国際公共政策大学院への進学が決まっていた友人の竹内美晴さんが、高澤さんの投稿を見つけ、「東大の後輩がこんな投稿をしている。平井さんのネットワークで何とかならないか」と共有してくれました。

高澤さんとは面識がありませんでしたが、一つの投稿が人から人へとつながり、私のもとに届いたのです。
当時、私はPFIを立ち上げたばかりで、まだ人材紹介の事業も始めていませんでした。

ただ、投稿を拝見し高澤さんの平和構築や国際協力にかける想いに共鳴しました。求める支援も具体的に書かれていたため、「自分のネットワークを生かせば力になれるかもしれない」と思いました。
当時はPFIの事業として支援できる段階ではありませんでしたが、友人からの依頼でもあり、特例としてボランティアで支援することを決め、LinkedInで連絡を取り、直接お会いして話を聞きました。

──高澤さんのどのような点に、可能性を感じたのですか。

平井さん 北アイルランドやルワンダへ足を運んだ行動力と、困難な状況でも自ら発信し、次の道を切り拓こうとする姿勢です。一連の行動から、意志の強さを感じました。

LinkedInでのやり取りも印象的でした。返信が速く、文章が分かりやすいうえ、感謝や配慮も伝わってくる。学生でありながら、相手の立場に立って行動できる、仕事のできる方だと感じました。

実際に話してみて、その聡明さもよく分かりました。一般企業に入り配属に身を任せるより、新卒から関心のある領域へ飛び込んだ方が、持っている力を伸ばせると考えました。

──そこで、なぜAAICを紹介したのでしょうか。

平井さん JICAなどの開発機関では、すでに新卒向けの募集が終了していました。そのなかで、民間の立場からアフリカ・アジアに直接関われる企業として真っ先に思い浮かんだのが、AAICでした。

私自身、ボストン コンサルティング グループやビル&メリンダ・ゲイツ財団(現ゲイツ財団)などで、さまざまな企業や社会課題の現場に関わり、多様なキャリアを見てきました。その経験から、「この人が中長期的に志を果たすにあたり、今どのような組織で何を経験すべきか」が見えることがあります。

その意味で、AAICは高澤さんにとても親和性が高い企業だと考えました。BCG出身の尊敬する先輩方も多数おり、ゲイツ財団在籍時に様々な場でAAICの職員の方々とやり取りした経験からも、プロフェッショナルとして大きく成長できる環境だと感じていました。

また、戦略コンサルや金融機関、商社やIT、外務省やJICAなど、多様な経験をもつ人材が揃っており、高澤さんの視野が大きく広がると考えました。何より、ナイジェリアやケニア、エジプトなどに拠点があり、日本とアフリカを行き来しながら仕事ができる。外交官を目指していた高澤さんに合うと考え、経歴や思いを代表の椿さんに伝えました。

──平井さんを通じてAAICのことを知ったとき、どのように感じましたか。

高澤さん それまでAAICを知らなかったので、「民間企業で、アフリカの社会課題にここまで深く関われる仕事があるんだ」と驚きました。外交官を目指していたため、国際社会や平和に関わる仕事は、政府や国際機関、NGOなどを中心に考えていました。AAICを知り、「外交官でなくても、やりたいことを実現できるかもしれない」と、視野が一気に広がりました。

──その後、選考を経て内定を得ました。AAICへの入社を決めた理由を教えてください。

高澤さん AAIC代表の椿さんとの面談を通じて、新興国に本気で向き合う姿勢に触れ、「ここで働きたい」と思いました。特にひかれたのは、日本企業とアフリカ企業をつなぐ共創事例を、実際の事業として生み出していることです。

外交を通じて、国と国との協力の枠組みをつくることは、とても重要です。しかし、その枠組みを生かし、日本とアフリカの間で具体的な事業や交流を生み出す日本企業は、他の地域と比較してまだ多くありません。外交によってつくられた枠組みを、具体的な事業や共創へとつなげていく。その部分に自分が関われることに、大きな可能性と面白さを感じました。

また、新しいことに挑戦しながら成長したいという思いが強かったため、若手にも挑戦の機会があるAAICの環境にもひかれました。平井さんが私の経験や思いを見て、椿さんに強く推薦してくださっていたことを入社後に知り、本当に感激しました。

インパクトキャリアは、新卒からでも始められる

──AAICで、これからどのような経験を積んでいきたいですか。

高澤さん 今後は、日本企業が現地進出するための市場分析や進出仮説の構築にとどまらず、現地での事業化・実装支援まで一貫して伴走していきたいです。

例えば、日本企業が現地へ進出し、製品を生産する仕組みをつくることができれば、現地の雇用機会も増えていきます。新たな事業の構想から、現地への進出、商品やサービスを実際に届けるところまで支援し、持続的な経済発展につなげていきたいです。

私は学生時代から何度かアフリカを訪れ、現地の人々の暮らしに触れてきました。大学時代にルワンダの子どもたちと行ったワークショップでは、彼らの発想の豊かさに驚かされました。

日本とアフリカ、それぞれの技術や知恵、発想が組み合わさることで、新しい価値が生まれたら面白いと思っています。それによって、現地の人々の暮らしを、もっと豊かでワクワクするものにできるかもしれません。

──インパクトキャリアを志す新卒や第二新卒の方へ、メッセージをお願いします。

高澤さん 就職活動をしていた当時の私は、視野がとても狭かったと思います。

「社会に貢献するには、政府機関などのパブリックセクターへ進まなければならない」「民間企業は利益を求める場所で、社会貢献をする場所ではない」と思い込んでいました。

しかし、AAICに入社し、民間企業が持つ技術や発想、実行のスピードが、社会を動かしている場面も多いことを知りました。社会課題に関わる方法は、自分が考えていた以上に多様だったのです。就職活動では、「競争」という空気にも息苦しさを感じていました。偏差値の延長線上のように、どの企業に受かったかで評価される。周囲からどう見られるかを気にして、不安を抱えている人も多いと思います。

けれど、就職活動は誰かと勝負することではなく、自分がどのような人生を歩みたいのかを考える機会です。人や社会からどう見られるかではなく、自分はどう生きたいのか。そのことに、できるだけ純粋に向き合ってほしいです。

成長を最も大切にしたいなら、成長できる環境を選ぶ。関心のある社会課題に取り組みたいなら、その領域へ進む。経済的な豊かさを重視することも、一つの選択です。大切なのは、世間の基準ではなく、自分が大事にしたいものを理解したうえで道を選ぶことだと思います。

──では、自分が大事にしたいものは、どうすれば見つけられるのでしょうか。

高澤さん まずは、自分がどのような社会課題に関心があり、どんな未来をつくりたいのかを言葉にしてみてほしいです。そして、興味を持った場所へ足を運び、そこで働く人の話を聞いてみる。周囲に思いを伝えることで、自分では知らなかった仕事や選択肢につながることもあります。

私自身、就職活動に悩んでいた時期に、原田マハさんの『独立記念日』(※7)と出会いました。作品紹介にあった、次の言葉に勇気をもらいました。

「誰かと出会うことで、何かを見つけることで、今までは『すべて』だと思っていた世界から、自分の殻を破り、人生の再スタートを切る」

自分の殻を破り続けることが、新たな道を切り拓いていく。その後、LinkedInの投稿をきっかけに、平井さんと出会い、私はいま、AAICで働き始めています。

私が歩み始めたこの道が、社会にどのようなインパクトをもたらすのかは、まだ分かりません。

一人で進む道は細く、不確かなものかもしれません。それでも、同じ志を持つ仲間と歩むことで、確かな道になっていくと信じています。

皆さんと一緒に、インパクトキャリアの道を切り拓いていけたらうれしいです。

(※7)『独立記念日』:著者:原田マハ/出版社:PHP研究所(PHP文芸文庫)

恋愛や結婚、進路、仕事、挫折、別れ、病気、大切な人の喪失など、さまざまな悩みを抱える女性たちを描いた24編の短編集です。誰かとの出会いや小さな気づきをきっかけに、これまで自分を縛っていた価値観から一歩踏み出し、人生を再び歩み始める姿を描きます。ここでいう「独立」とは、一人で生きることではなく、自分の人生を自分で選び直すこと。迷いやつまずきを抱える人の背中を、優しく押してくれる一冊です。

社会を変える「インパクトネイティブ」

社会人としてのスタート地点から、社会へのインパクトを仕事の前提として捉える若者たち。彼らはインパクトキャリアの中でも「インパクトネイティブ」と呼べる存在です。

新卒で入った組織で身につけた価値観や仕事の進め方は、その後のキャリアを支える“コアな遺伝子”になります
高澤さんがAAICで積む経験も、将来どのような立場に進んだとしても、社会へのインパクトを考える判断軸として残っていくでしょう。

「インパクトネイティブ」の存在が、社会課題の解決に向かう仕事や事業を増やし、より良い未来を切り拓いていく。その力強い可能性を、高澤さんの歩みが照らしています。

キャリアをつくる高澤さんのインプット

愛読書

  • 『独立記念日』(原田マハ)
    記事本文内でも引用。人生の壁にぶつかった時に勇気づけてくれる本
  • 『星の王子さま』(サン・テグジュペリ)
    物事の本質を見極めることの大切さを教えてくれる特別な本
  • 『超加速経済アフリカ LEAPFROGで変わる未来のビジネス地図』(椿進)
    最先端のテックビジネスなど、アフリカのイメージを一新させてくれる本

日頃の情報源

  • 日本経済新聞
  • 国連フォーラム メーリングリスト

社会課題に取り組む仕事を、次のキャリアの選択肢に

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