「超富裕層への国際課税議論」10億ドル超える資産に2%の課税

「億万長者は資産に対して平均0.3%の税金で、労働者が支払う税率よりずっと低い」

超富裕層への国際課税の議論が活発になっています。
極端な富の偏りは、世界的に格差を広げ持続可能で民主的な世界を遠ざけています。

前提として、現在、世界には億万長者が約 3,000 人おり、近年、彼らの多くは税金の抜け穴や法的な会計処理を利用して納税額を最小限に抑え、ますます裕福になっていると言われています。

裕福な米国人が納める平均税率は所得に対してわずか8%で、米国労働者の通常の賃金収入よりも低い税率でお金を稼いでいることが多いとも一部報道されています。
超富裕層への国際課税議論が行われたのは、24年7月にG20財務省・総会会議にて。フランスの経済学者ガブリエル・ズックマン氏による報告書「超富裕層に対する最低実効税率(※1)」が議長国ブラジルの委託で提出されました。

(※1)実効税率とは、富裕層が利用する抜け穴や合法的な回避策をすべて考慮した上で算出される金額

ズックマン氏から「億万長者は現在、資産に対して平均0.3%の税金を支払っており、これは労働者が支払う税率よりもずっと低い税率です。」と報告されました。

富の偏在、億万長者自らが多くの税金の支払いに賛同する声も

またズックマン氏は「大富豪と彼らが所有する事業はグローバル化の多大な恩恵を享受してきた。これが現行の税体系で適切にそうした利益の分配がなされているか、あるいはごく一握りの人々に利益が集中していないかとの疑問をもたらしている」と指摘しました。
同氏によると、提案した国際課税ルールが実行されれば、世界中の約3,000人から年間で2,000億ドルから2,500億ドルもの税収が得られるほか、課税対象を資産1億ドル超に広げれば、さらに年間1,000億ドルから1,400億ドルの税収が生み出されるといいます。

さまざまな業界や経歴を持つ億万長者による無党派のネットワーク「パトリオティック・ミリオネアズUK(※2)」のメンバー、フィル・ホワイト氏は次のように話しています。

(※2)パトリオティック・ミリオネアズUKとは

Patriotic Millionaires UK は、英国全土のさまざまな業界や経歴を持つ英国の億万長者による無党派のネットワークです。このネットワークは、富裕層の声を活用して、システムを変更し、極端な富をなくし、富裕層が公正かつ適切な貢献を行えるようにすることで、より良い英国を築くという単一の使命を果たしています。

ズックマン氏の報告書は、超富裕層への課税に対する協調的かつ国際的なアプローチが、極端な富の集中に対処する賢明かつ公正な方法であることを示している。

億万長者の富の問題に取り組むことは、最初のステップとして考えるべきだ。極端な富の腐食効果から民主主義を守ることを目指すなら、私のような億万長者もより多くの税金を支払う覚悟をし、公平な負担をすることに誇りを持つべきです。

極端に偏在した富は、グローバル化の恩恵を受けて発展し、巨大な富を生みました。それを一部の人が享受する一方、世界では飢餓に直面する人々が約7億5,700万人います。これは世界では11人に1人、アフリカでは5人に1人に相当します

21世紀という文化的・社会的に成熟した時代において、これほどの不均衡は私たちが直視すべき課題です。それでも、富を持つ人々が民主主義を支え、より良い未来を築くために積極的に税を負担しようとする動きは、人類の希望の灯火となる可能性を秘めています。

参考記事:
2024年6月26日 ロイター通信
2024年7月28日 日本経済新聞
リオデジャネイロー国連5機関が本日発表した最新の「世界の食料安全保障と栄養の現状(SOFI)」2023年報告書 

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