貧困根絶の意味、新たな人類のステージとは

日本の相対的貧困率はG7諸国で1位
日本の経済発展が進む一方で、見えにくい「貧困」の現実が存在しています。
特に、日本の相対的貧困率はG7諸国の中で最も高く、15.4%に達しています(2021年厚生労働省調査)。
相対的貧困とは、所得が中央値の半分に満たない人の割合を指し、社会における経済格差の一端を示しています。現代日本において、経済的な困難を抱える人々は決して少なくありません。
なぜ日本の貧困率は高いのか。
その背景には、高齢化や非正規雇用の増加、バブル崩壊後の長引く経済低迷などがあり、これが特にひとり親家庭や高齢者の生活を厳しいものにしています。OECD加盟国の中でも、日本のひとり親家庭は相対的貧困率が高い水準にあり、社会の支援が求められることが課題となっています。
「自己責任論」という壁
不況や自然災害、コロナ禍のパンデミックや戦争など、個人の努力では抗えない状況に誰もが陥る可能性があります。にもかかわらず、日本社会には「貧困は努力不足のせい」とする自己責任論が根強く、支援が遅れがちです。
実際には、貧困は個人の欠陥ではなく、構造的に生まれるケースが多いのです。
歴史学者ルドガー・ブレグマン氏もこう述べています。
貧困とは知識の欠如ではありません。その人が愚かだから愚かな選択をするのではなく、どんな人でも愚かな選択をしてしまう状況に置かれているのです。
貧困が及ぼす影響とその実態
貧困が人々の「生活」はもちろん、「選択」にまで影響を与えていることがわかってきました。
インドのサトウキビ農家を対象とした研究では、収穫前の窮乏期と収入を得た後の豊かな時期とで知能テストの結果に大きな差が出ました。経済的不安が人の認知力を低下させ、短期的で限定的な行動しか取れなくさせるのです。
経済的な不安は人の認知力をも鈍らせる影響があることが示されています。
私自身も経済的な困難を経験した一人です。親の離婚後、母子家庭として経済的に厳しい時期を過ごしました。新卒の就職活動では、安定した収入を得ることを目的に、中堅企業での仕事を選びました。金融の仕事は自分にとって収入を得ることが目的であることを実感し、その後やりがいを求めて、転職をすることになりました。
この経験は、欠乏と選択の関係を強く実感させるものでした。
自分の仕事が好き?やりがいを持ってイキイキ働いてる
142ヶ国 23万人の会社員を対象とした 最近の調査によると 実際に仕事が好きだという人は たったの13%という驚きの数字が出ています。
Facebookで働く数学の天才が 何年か前に嘆いていました。
「私の世代最高の頭脳が考えることが よりにもよって ウェブ広告のクリックを どうやって増やすか、だなんて」
資本主義では、お金を稼ぐことが最上級にくる原理が働きやすく、それゆえに、自分の仕事も稼げる仕事かどうか?で自分の仕事を判断する傾向が強くなります。
ではもし、一定の所得を下回った瞬間に自動的に基礎所得(ベーシックインカム)が保障されるとしたらどうでしょうか。生活保護のような複雑な手続きも不要で、所得証明を提出すれば毎月必要な金額が振り込まれる仕組みがあったなら。
それは人々にとって、単に生活を支えるだけでなく、本当にやりたいことや意義のある仕事に挑戦するための土台となる可能性があるかもしれません。
貧困根絶の意味
ブレグマン氏はこう語ります。
「どれだけの優秀な科学者や起業家や文筆家が 今この瞬間にも 貧しさの中で 弱り果てていることか。基礎所得保障(ベーシックインカム)にはベンチャーキャピタル のような効果を人々にもたらすはずです。」
今、もし誰もが一定の所得を得る権利が保障されるとしたら、私たちの働き方や生き方は大きく変わるかもしれません。
ブレグマン氏も、「基礎所得(ベーシックインカム)が人々の力を解き放ち、貧困根絶だけでなく、個々の才能を社会に活かす力を持つ」
と述べています。
例えば、貧困のために夢を諦めた人々が、本当に情熱を注げる仕事に就くことができたなら、社会全体がもっと豊かになる可能性を秘めています。
貧困の根絶は単に生きるための救済ではなく、誰もが自分の力を発揮できる社会づくりへと繋がるとしたら、新たなステージへ人類を導くかもしれません。
世界には希望を広げるワクワクするようなアイデアが、豊富にあリます。
ここまでブレグマン氏のアイデアを中心にご紹介してきましたが、ぜひ、ブレグマン氏のTEDスピーチもご覧ください。
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