多党化の流れ──新党「チームみらい」と「日本保守党」が要件を満たし、国政政党へ

18年ぶりの高投票率。政治の地図が動いた
2025年7月20日に行われた参議院選挙は、近年まれに見る関心の高まりを見せました。
全国の投票率は58.51%に達し、前回(2022年)の52.05%から6ポイント以上上昇。50%台後半の投票率は実に15年ぶりで、12道県では60%を超えるなど、全国的に有権者の関心が高まりました。
一方で、自民・公明の与党連合は参院で過半数を維持できず、政権与党としての立場が不安定に。代わって、参政党や新興政党が議席を伸ばすなど、「多党化」の流れがより色濃く表れた選挙でもありました。
新党「チームみらい」と「日本保守党」が政党要件を突破
今回の選挙で注目したいのは、2つの新党がともに政党要件(直近の国政選挙で国会議員1人以上かつ得票率2%以上)を満たし、国政政党として正式に誕生したことです。
AIエンジニア出身の安野貴博氏が率いる「チームみらい」は、結党からわずか2か月で約151万票(得票率2.57%)を獲得し、比例代表で1議席を獲得。国政政党として認定されました。
また、百田尚樹氏が代表を務める「日本保守党」は、約298万票(得票率5.04%)を得て、比例で2議席を確保。保守層を中心に強い支持を集めました。
参院選で新党が政党要件を満たすのは、1995年の新進党、2019年のれいわ新選組、2022年の参政党に続く快挙であり、この30年でわずか4例しかない希少な出来事です。

写真:各党公式HP・Xより
対照的な2つの新党、その掲げた価値観
今回の選挙では、価値観の大きく異なる2つの新党が、同時に国政の舞台に登場したことが印象的でした。
「日本保守党」は、「日本を強く、豊かに」を掲げ、移民反対、LGBT反対、ジェンダー平等反対、北朝鮮や中国への強硬姿勢など、日本の国体や伝統文化を守るという保守的な政策を明確に打ち出しました。ネット上の右派層を中心に支持を広げ、その明快なメッセージが、一部の有権者の不安や怒りに共鳴したとも指摘されています。
一方、「チームみらい」は、テクノロジーと人間的な対話の両輪で政治を変えるという、まったく異なるアプローチをとりました。
新産業育成による所得倍増、未来志向の税・社会保障制度の再構築、立法の「見える化」など、AIやデジタル技術を活用しつつ、「分断をあおらない」「誰かをおとしめない」という価値観を軸に据えた政策を展開。
安野氏は、民意をデジタルで可視化・反映する新しい政治のプロセスを実装することで、「永田町の同質性」に風穴を開けようとしています。新たな風が、静かに、しかし確実に吹き始めているのかもしれません。
多様な民意があらわれた選挙
自らの声を上げ、自分の考えを伝え、他者の意見に耳を傾ける時代へ──。
今回の参議院選挙は、そうした「民主主義の新しい入り口」に、日本社会全体が一歩足を踏み入れたような出来事だったのかもしれません。
自らの意思を表明するという第一のステップが広がった今、次に私たちが向き合うのは、「異なる立場や意見を持つ人たちと、向き合い、対話していくこと」です。世界では民主主義で統治されている国家は4割ほどというデータ(※)もあります。民主主義に参加していることの自覚と光栄さを持ってこのシステムをアップデートしていくことが大切だと感じました。皆さんは、この選挙で何を感じましたか?ぜひ、ご意見や取材リクエストなどお待ちしています。
(※)「Economist Intelligence Unit(EIU)」の民主主義指数(Democracy Index)などによると、世界の民主主義国家は約4割というデータがあります。選挙の有無だけでなく、報道・司法の自由などで評価されます。
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