見知らぬ誰かへ、未来の誰かへ。やさしい循環が生む「お互いさまの街」
吉成さんの急逝、遺志を継ぐ―チケットは福島、全国、そして海外100店舗に展開
ところが、2021年5月、衝撃的な出来事が起きます。それは吉成さんが突然、急性大動脈解離で倒れ、意識が戻らないまま、亡くなりました。享年49歳。
震災の間もともに活動し、盟友ともいえる吉成さんの死に、半田さんを含めた理事たちはこれ以上ないほどの強い衝撃を受けました。ようやくショックから立ち直った頃、半田さんは「『お互いさまの街ふくしま』と、『恩送り』が優しさと安心を生む社会を実現していくことが、吉成さんの遺志を生かすことになる」と決意を新たにしました。
そして、本格的に両事業に取り組んで3年。
「お互いさまチケット」は、福島市、福島県内の飲食店をはじめとして、美容室、病気の子どもの預かり施設、母親の心理相談、生花店、家事代行、性教育講座、動物病院など、幅広い業種、事業、サービスで導入されています。
この中には、子どもたちのピザ作り教室を行う店舗や、子ども一時預かりサービスなども含まれ、業種も多彩です。
チケット導入で利用客が増えた店舗もあるなど、「恩送り」の相乗効果が出たところもありました。また、チケットが観光資源の一つとなり、観光客の増加や来店率向上などに繋がっています。


2025年4月までに福島県内、県外(全国各地)、さらには海外も含めて導入は、なんと100か所以上に上りました。
2024年8月からは、福島県内に14店舗あるモスバーガーでも小学生以下の子どもを対象にチケット利用が開始しています。
寄付されたチケットはボードに貼り付けられますが、「恩送り」をした人が、次の利用者にチケットとともに寄せた手書きのメッセージも一緒に掲示され、好評です。
「おいしく食べてね」「応援しているよ」「笑顔になりますように」。
メッセージは温かな言葉でいっぱいです。
見ているだけでも、知らない誰かからでも、「恩送り」の温かさが確かに伝わってきます。
半田さんは「吉成さんの思いをのせて、お互いさまチケットとお互いさま倉庫 コミュニティフリッジひまわりの活動は地域資源となり、お互いさまの街、誰にでも優しい街へむけて、福島市だけでなく全国各地、海外までも広がって、花を咲かせ始めています」と話します。
さあ、次はあなたの番かもしれません。
どんな小さなことでも、ほんのちょっとでもOK!
心の中にあるその優しさを、見知らぬ誰かへ、未来の誰かへ、「ペイ・フォワード」してみませんか?
半田 真仁(はんだ しんじ)さん
NPOチームふくしま代表理事、採用と教育研究所代表。地域づくり、復興事業、社会起業、子どもの教育活動などで、「REVIVE JAPAN CUP 2014復興まちづくり奨励賞」(復興庁)、「グッドライフアワード特別賞」(社会貢献支援財団)、「新しい東北」復興ビジネスコンテスト企業賞・損保ジャパン日本興亜賞 (復興庁 「新しい東北」官民連携推進協議会)など受賞多数。公民や道徳、理科の教科書や副読本などにも取り上げられている。